研究課題/領域番号 |
20J00410
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
百合草 寿哉 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | τ傾理論 / 団代数 / Bongartz completion |
研究実績の概要 |
本年度は、多元環の表現論と団代数(クラスター代数)理論の2つの分野の架け橋を作る、主に以下の2つの研究を行った。 1.多元環の表現論の傾理論において、Bongartz (1980) によって与えられた、任意の部分傾加群に対しそれを因子に持つ傾加群を得る操作 (Bongartz completion) は、τ傾理論 (2014) に拡張された。研究者はτ傾理論において、Cao氏と行田氏と共同研究を行い、τ傾加群の不変量であるC行列を用いてBongartz completionの新たな特徴付けを与えた。この特徴付けを基に団代数に新たな操作 (Bongartz completion) を導入し、存在性や一意性を証明した。導入した団代数のBongartz completionは、団代数の圏化を経由し、τ傾理論のBongartz completionと一致する。1つ目の応用として、Jasso (2015) によるτ傾加群のリダクションの団代数における類似を与えた。また、2つ目の応用として、団代数理論のYパターンにおいてYシードが負のy変数から一意に定まることを示した。 2.団代数理論において、無限変異型団代数のgベクトル扇が稠密にはならないことを示した。即ち、gベクトル扇が稠密となる団代数は有限変異型に限られる。さらに、非輪状団代数のgベクトル扇が稠密であることと、その団代数が有限型またはアファイン型であることが同値であることも与えた。本結果を団代数の圏化によって多元環の表現論に移すことで、gベクトルが稠密になる遺伝的多元環の分類が得られる。gベクトル扇は団代数の散乱図形 (scattering diagram) や多元環の安定性空間などの部分構造であるため、本結果はこれらの構造を解析するのに役立つと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画とは少し異なり、gentle多元環に着目した結果ではないが、多元環の表現論と団代数理論を互いに応用し、それぞれ発展させるという当初の目的に沿った研究を行い、進展が得られている。さらに、C行列を用いたBongartz completionの新たな特徴付けをgentle多元環の幾何学的実現に適用することで、その場合のBongartz completionを幾何学的に実現できることも得られており、おおむね順調な進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
多元環の表現論と団代数理論の架け橋を作る研究を今後も続けていく。特に本研究の最初の予定通り、gentle多元環の導来圏をもっと積極的に取り入れる。特に、Labardini-FragosoとMou (2022) によって、オービフォールドに対応するような一般 (generalized) 団代数とgentle多元環の関係が与えられており、本研究と近しいことから、情報を収集するとともに共同で研究を進めていきたい。
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