研究課題
南米パタゴニアのペリートモレノ氷河、ウプサラ氷河においてアラスカ大学と共同で運用していたインターバルカメラをそれぞれ回収した。2018年の設置以来、2年間の氷河変動を記録することに成功している。その後合計4台のカメラを、近年急速に後退しているヴィエドマ氷河周辺の基盤上に設置しデータ取得を開始した。ペリートモレノ氷河において長期間連続で精密な氷河流動を測定する為に、二周波受信GPSを氷河上に設置し、毎秒の氷河流動を測定し始めた。これらのデータは現地協力者によって随時保守点検やデータ回収が行われている。ペリートモレノ氷河で実施している気象観測や氷河表面質量収支の観測データについてデータ解析を推進した。気象の経年変動や表面質量収支モデルによる表面質量収支の計算を実施した。近年にかけて表面融解量が増加する様子が明らかとなった。また、この氷河で計算された質量収支は、南半球の気候を主に制御するエルニーニョ・南方振動や南半球環状モードといった地球規模の気象現象との関係が示唆される結果が得られつつある。氷河の末端消耗プロセスを理解するために、氷河流動モデルの構築を行なった。当初はアラスカ大学を訪れ数値モデルの習得を目指していたが、疫病蔓延のため申請者自身で構築を進めた。有限要素法を用いて氷河流線に沿った二次元の力平行方程式を解き、氷河流動と圧力を計算した。計算される氷の歪みより、末端消耗プロセスに関連する主応力やせん断応力が計算できるようになった。
2: おおむね順調に進展している
疫病の世界的な蔓延により、国内外での活動が制限されたものの、受入教員や関係する研究者とやり取りを進め、すでに取得しているデータの解析や数値モデルの構築を予定通り実施することができた。進捗の状況は先に示すとおりである。
データを取得しつつあるインターバルカメラ画像やGPS観測のデータについて氷河の末端変動や流動速度,カービングなどに関して解析し氷河変動メカニズムを解明する予定である。ペリートモレノ氷河で実施している気象観測や氷河表面質量収支の解析結果について、引き続き議論を進め論文の執筆と投稿を行う。氷河流動モデルについて、構築したモデルを精巧にすることに加え,氷河末端や氷河底面での境界条件を変えることで,末端消耗プロセスがどのように変化するのか数値実験を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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