研究課題/領域番号 |
20J00594
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
迫田 和馬 東京大学, 農学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 光合成 / 作物 / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
高CO2化に伴う地球温暖化や気候変動により、水資源が農業生産を制限する地域の拡大が懸念され、節水型農業の重要性が高まっている。今後は、より少ない蒸散量で高い光合成能力を示す水利用効率にも優れた作物の創出が不可欠となる。よって、節水条件で優れた生産性を示すダイズの育成に向けた育種戦略を構築するため、高い光合成能力と水利用効率を両立する遺伝的機構の解明が急務となる。本研究では光合成の可視化装置を活用しダイズ変異体リソースと化合物ライブラリーを対象とした大規模スクリーニングを行う。これにより、高い光合成能力と水利用効率を両立する遺伝的機構を網羅的に解明し、節水条件で優れた生産性を示すダイズ品種の育成に向けた分子育種戦略のデザインを目指す。 現在までに、96穴プレートを用いた独自のシロイヌナズナ土耕栽培システムを確立した。さらにこの栽培システムを活用し、1万種以上の低分子化合物を対象としたスクリーニングを行った。その結果、光合成活性を高める作用を示す新規化合物を3種、光合成活性を低下させる作用を示す化合物を70種以上の同定することができた。また、タバコ個体から採取した葉片を用いた独自の化合物スクリーニング系を構築した。このスクリーニング系を活用し、光合成活性を高める効果を示す新規化合物を7種、光合成活性を低下させる作用を示す化合物を多数同定した。シロイヌナズナとタバコで同定された候補化合物はそれぞれ異なるものであり、光合成を高めるうえでケミカルが作用する標的タンパク質が複数存在し、さらにそれが植物種によって異なる可能性が示唆された。この成果の新規性は高く、将来的には未知の光合成の制御メカニズムの解明や植物成長の新たな制御技術への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、モデル植物であるシロイヌナズナおよびタバコを用いた独自の化合物スクリーニング系を構築をしている。これを活用し、光合成活性に作用する新規化合物を複数同定することに成功している。同定した化合物と構造が類似した類縁化合物をすでに合成している。また、ダイズ変異体ライブラリーに含まれる300の変異系統を圃場栽培し、多量の種子を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
同定した化合物の作用機構や光合成活性に作用を示す基本骨格、化合物の効果が最大となる類縁化合物の同定を目指す。また化合物がイネやダイズ、トマトなどの実用作物の物質生産性及び水利用効率に与える効果を検証する。さらに、ダイズの変異体ライブラリーより、光合成活性および水利用効率に特異的な表現型を示す系統を同定する。
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