本研究の目標は、原始太陽系星雲中での(微)惑星形成史を紐解くことである。特に、「太陽系は星団中で誕生した」という点に着目し、原始太陽系星雲の物質分布の不均質の程度、ダスト成長、小天体の形成・熱進化といった問題に取り組む。本年度は以下の2つの研究を実施した。 1. 原始惑星系円盤の進化において、磁気駆動円盤風が重要な役割を果たしうることが最新の研究で示されている。この場合、原始惑星系円盤のガス面密度・圧力の動径分布が古典的な描像と大きく異なると考えられる。我々は、磁気駆動円盤風によって進化する円盤中において円盤内側領域で結晶化したケイ酸塩ダスト粒子が円盤外側にどの程度輸送されるのかを数値計算によって調査し、大きく成長したダスト粒子が効率的に外側に輸送されうることが明らかになった。本研究の結果はThe Astrophysical Journal誌に発表した。 2. コンドライト隕石の重要な構成要素であるコンドルールの形成環境について、特に細粒リムの形成機構・形成環境について考察することで新たな仮説を提示した。それは、蒸発する未分化氷微惑星まわりの弧状衝撃波である。このような環境を考えると10--100ミクロン程度の厚さの細粒リムをコンドルールのまわりに「塗装」することが可能であることを準解析的な計算によって示した。本研究の結果はThe Astrophysical Journal誌に発表した。 その他、太陽系外縁天体衛星系の潮汐軌道・熱進化に関する研究をThe Astronomical Journal誌に発表し、隕石の核合成起源同位体不均質性と太陽系の形成環境・初期進化に関する総説を遊星人(日本惑星科学会誌)に発表した。加えて、ダスト集合体の衝突成長・破壊に関する研究、太陽系の生まれた星団の満たすべき条件に関する研究も実施した。
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