研究課題
マッデン・ジュリアン振動 (MJO) の顕在化頻度が経年的に変動する要因を解明するにあたり、本年度は主に観測に基づく40年分の再解析データを用いて、MJOよりも長い時間スケールで変動する海面水温分布や大気循環の影響に着目した統計解析を行った。インド洋・海洋大陸・西太平洋で顕在化するMJO事例をその活動が活発な期間とともに同定し、MJOが特に顕著に観測される北半球冬季 (11月-4月) に対してMJOの顕在化頻度を定量化した上で、その経年変動を特徴付ける場を調査した。その結果、MJOが顕在化しやすい年には、MJOよりも長い時間スケールでの対流活動がインド洋・西/中央太平洋 (海洋大陸) で有意に活発 (不活発) 傾向にあり、それに付随して背景場の東西循環は気候値よりも東西方向に伸展、南北循環は気候値が強化された傾向にあることを確認した。また、これらの場の実現には、成層圏準2年周期振動 (QBO) とエルニーニョ・南方振動 (ENSO) による協調的な強制が重要であることもわかった。具体的には、MJOの顕在化は、大振幅を除くエルニーニョ年であればQBO位相とは無関係にエルニーニョ傾向が強い時ほど、ENSO中立/ラニーニャ年であればENSOの振幅とは無関係にQBOに伴う上空東風が強い時ほど促進されることを見出し、これらが上記の背景場と無矛盾であることを示した。加えて、MJOが顕在化しづらい年には、MJOが顕在化しても西太平洋での水蒸気蓄積が阻害されるために持続期間が短くなることも判明し、この事実も背景場と整合的である。さらに、本研究課題を遂行する上で、対流圏上層に捕捉された混合ロスビー重力波が背景場の東西循環との相互作用を通じて "湿潤過程を介さずに" MJOを顕在化させうることが新たに明らかとなった。その内容は投稿論文としてまとめられ、現在国際誌に投稿中である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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