研究課題/領域番号 |
20J00652
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
上田 哲司 国文学研究資料館, 研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 北海道 / アイヌ / 日本史 / 蝦夷地 / 近世 |
研究実績の概要 |
本研究は、近世の文字史料を収集し、そこよりアイヌ社会に関する情報を抜粋し、その実態を細かく追及することを目的にしていた。しかしながら、新型コロナウイルスの流行のため、史料調査に赴くことが不可能になった。そのため、計画の変更が避けられない事態になった。このような中であったが、令和2年度に、近世アイヌ史に関する業績としては、以下の4つの実績を挙げた。 ひとつは、『アイヌ文化史辞典』の分担執筆を担当し、原稿を出版社である吉川弘文館に渡した。本著は、令和4年6月に刊行される。次に、蝦夷地の直轄化によって、国家権力が蝦夷地・アイヌ民族を覆うようになった経緯について論述した「蝦夷地はいつから「日本」か?」を『アークティック・サークル』118号に寄稿した。これは令和3年3月に刊行された。また、「書評と紹介 菊池勇夫著『道南・北東北の生活風景 : 菅江真澄を「案内」として』」を執筆して『日本歴史』878号に寄稿し、令和3年7月に刊行された。 また令和3年度には、令和2年度の繰越金を用いて研究を進め、近世アイヌ史・蝦夷地史の概説論文「列島北方の「近世」」(牧原成征・村和明編『シリーズ日本近世史を見通す 第1巻 列島の平和と統合』)を執筆し、原稿を出版社である吉川弘文館に渡した。 また、令和3年度には、「移住型植民地・北海道における名望家の登場」『北方人文研究』15号、「島松駅逓所をめぐる北海道の交通と稲作の歴史」『運輸と経済』896号、「余市・林長左衛門家の三等郵便電信局関係資料の目録と解題」『北海道博物館研究紀要』7号の3本の論考を執筆し、いずれも令和3年度中に刊行された。これらはいずれも近代北海道史に関する論考であり、当初計画と比べて対象とする時代が異なるが、史料の収集が困難な状況が続く中、現在までに収集してきた史料、遠方へ出張に行かずとも閲覧が可能な史料を用いて、可能な限りに研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新型コロナウイルスの流行という、研究計画提出当初には全く予期せぬ事態を迎え、計画は大きく変更せざるを得なかった。しかしながら、令和2年度と、その繰越金も用いた令和3年度に、書評なども含めると、累計7本もの論考を執筆した。これらは、当初計画と内容の異なるところも多いが、それは調査に赴けないという状況に制約されているためで、単純に本数だけで判断すれば、十分な成果ではないだろうか。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度、令和3年度とも、史料調査を予定通りに進めることがかなわなかった。今年度は、その不足を補うためにも、できる限り史料調査に赴くとともに、並行して論文の執筆を行う必要がある。本研究は、もともとの予定では、①江戸幕府による蝦夷地直轄に関する史料や、②東北諸藩による蝦夷地警備に関する史料、③場所請負商人に関する史料などを収集する予定であった。②は、東北各地の旧城下町にあることが多い。③は、場所請負人の多くが近代になると本州へと引き上げたため、本州の、特に西日本の史料収蔵機関に所蔵されていることが多い。そのため、出張先が全国に点在しており、収集自体が容易ではない。本年度は最終年度であるので、なるべく対象を広く見て、日本各地への出張・史料収集を行いたい。
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