研究課題/領域番号 |
20J00787
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
大谷 彬矩 龍谷大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 自由剥奪 / 自由刑 / 保安処分 / ダイナミック・セキュリティ / 受刑者処遇 / 少年矯正 |
研究実績の概要 |
2021年度は、各種拘禁・収容生活の実態を把握するために、自由剥奪施設の実地調査を予定していたものの、新型コロナウイルスの感染状況が改善しなかったため、調査を実施することはできなかった。しかし、この状況下における自由剥奪施設自体が研究対象になり得るものであり、この時期にしか得られない貴重な研究成果を収めることができたと考えている。また、昨今の刑罰制度改革により自由刑の単一化がなされることが決定したことに加え、少年法改正により少年矯正に多大な影響が生じることが予想されている。拘禁に関して、文字通り時代の転換点となるこの時期に、従来の自由刑そのものを問い直したり、改正議論に資するような成果をあげることができた意義は大きいと思われる。それらの内容は、(1)コロナ禍における自由刑、(2)受刑者処遇、(3)少年矯正、に分類することができる。 (1)コロナ禍における自由刑 ドイツのグライフスヴァルト大学名誉教授であるFrieder Duenkel氏の呼びかけにより、“The Impact of Covid-19 on Prison Conditions and Penal Policy”という書籍に寄稿した。 (2)受刑者処遇 日本国内では、自由刑の重大な改正も行われようとしている。その規定ぶりによっては、拘禁概念の中に多種多様なものが織り込まれ、実質的に保安処分が刑罰の中に取り込まれることが危惧される。この点について、自由刑と保安処分の比較を通して、法改正の問題点を検討した。 (3)少年矯正 2022年4月から施行されている改正少年法は、特定少年に対する保護処分の新設を受け、第五種少年院の創設など、少年矯正に大きな影響を与えることが予想される。この点に関して、ドイツの少年法制との比較法研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、自由刑に関するこれまでの研究成果をまとめ、学術図書として『刑務所の生活水準と行刑理論』を公刊した。本書は、刑務所の生活水準について、理論研究、歴史研究、比較法研究を通じて、刑務所の目指すべき方向性を提示することを試みるものである。生活水準という視座を通じて、自由刑だけでなく、その他の自由剥奪の在り方を問い直すことにも応用することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの研究成果を整理し、自由剥奪の内実を統一的観点から検証するメソッドの確立を目指す。比較法研究においては、ドイツでの立法、議論状況、実態面についての調査を踏まえ、日本の自由剥奪制度に対する示唆的知見を析出する。感染状況を見ながら、国内および国外における自由剥奪施設の実地調査の可能性を引き続き模索する。
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