最終年度である2022年度は、これまでの研究成果を整理し、自由剥奪の内実を統一的観点から検証するメソッドの確立を目指した。 ドイツとの比較法研究において、現地での施設参観を計画していたもの、新型コロナウイルス感染症の流行により、昨年度、一昨年度と現地調査ができなかった。最終年度は実際にヘッセン州のシュヴァルムシュタット司法執行施設と、ニーダーザクセン州のロスドルフ司法執行施設を参観することができた。現地調査の結果、自由刑と保安処分との間に懸隔を設けることを要請した2011年の連邦憲法裁判所判決は、実務の現状を追認したのではなく、実務に大きな影響を与えていることが分かった。 自由の剥奪について、法的地位により差異を設けることの是非について検討することを目的とする本研究において、自由刑と収容保安処分における処遇を実務上、明確に区別しようとする運用が海外で行われていることを確認できた意義は大きい。すなわち、自由刑の形をとりながら治療的な処遇を取り入れることは、潜在的保安処分化をもたらすものと言えるし、保安処分に類似するのであれば、自由刑とは区別された処遇の要請が生まれるとの推定が生じるからである。 また、自由刑の中でも無期刑について、理論的検討を行った。ドイツの無期刑では、最低服役期間経過後に、保安処分と類似した性質と捉え、一般の受刑者との区別が行われるべきとの立場がある。日本との単純な比較は困難であるが、無期刑受刑者に対する特別な処遇の必要性が認識されながら、実務上明確な区別がなされていないわが国でも参照する意義があると思われる。
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