研究課題/領域番号 |
20J00837
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小泉 佑介 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | アブラヤシ / ポリティカル・エコロジー / 人口センサス / インドネシア |
研究実績の概要 |
令和2年度は,新型コロナウイルスの世界的な拡大によって海外でのフィールド調査が困難となった一方,日本国内での文献調査や遠隔による調査を通じて新たな知見を蓄積することができた。具体的な研究内容は,以下3点にまとめられる。 第1に,本研究の主題でもあるインドネシア・パーム油産業における巨大フードシステムの再編と小農社会の構造変化に関して,英語圏の書籍・論文を中心とする文献調査を行った。中でもポリティカル・エコロジー論に注目し,2020年人文地理学会大会(オンライン)では,その系譜と展望について発表した。また,現在はその内容を論文としてまとめ,学術雑誌に投稿中である。 第2に,本研究が重視するインドネシアのマクロ社会経済統計に関して,その実施状況やデータ整備の実態に関する調査を行った。特に報告者はこれまでインドネシアにおける人口センサスのデータ分析に基づく人口動態分析を重視してきたが,2020年に実施された人口センサスは新型コロナウイルスの蔓延によって様々な変更が求められたことから,その実態を政府資料やメディア報道の分析,およびZoom等のツールを用いた遠隔での関係者への聞取り調査を行った。これら調査結果は研究ノートとしてまとめ,学術雑誌に投稿中である。 第3に,インドネシアでのフィールド調査を行うための事前準備として,中央統計庁が管理・販売する社会経済統計データの整備・分析を進めた。特に令和2年度は全国規模の社会的・経済的変化を把握する上で重要となる村落可能性調査のデータを購入し,研究対象であるスマトラ島の人口動態について分析を行った。こうした村落可能性調査データの分析結果に基づく論考は,令和3年度内に学術雑誌へ投稿する予定である。 令和3年度は海外への渡航が可能となることを願いつつ,令和2年度の研究内容をさらに発展させていく所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の報告者による研究は,おおむね順調に進展したと評価できる。令和2年度は新型コロナウイルスの世界的な拡大により海外渡航が困難となったが,本研究では研究の軸足を文献調査とデータ分析にシフトすることで,海外の現地調査とは異なる新たな知見を得ることができた。 文献調査に関しては,生産現場におけるミクロな「人間-環境(human-environment)」関係と,国家の政策やグローバル市場といったマクロな要素との相互作用に注目するポリティカル・エコロジー論に注目した。ポリティカル・エコロジー論とは,英語圏の地理学者を中心に発展してきた議論であり,「人間-環境」関係の解明に向けて生態学の視点と政治経済学の視点を統合させたアプローチである。特に2000年代以降のPE論における新たな展開として,スケールの議論に注目した研究が関心を集めており,地理学と生態学のスケールに関する議論を中心に文献購読を行った。 データ分析に関しては,本研究が重視するインドネシアのマクロ社会経済統計に関して,その実施状況やデータ整備の実態に関する調査を行った。特に報告者はこれまでインドネシアにおける人口センサスのデータ分析に基づく人口動態分析を重視してきたが,2020年に実施された人口センサスは新型コロナウイルスの蔓延によって様々な変更が求められたことから,その実態を政府資料やメディア報道の分析,およびZoom等のツールを用いた遠隔での関係者への聞取り調査を行った。具体的には,中央統計庁が発行している報告書やメディアにおける関係者の発言を整理した上で,人口センサスの調査員に対して遠隔によるインタビューを行い,現場で見えてきた課題等を明らかにした。上記の研究成果は,学術雑誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,まず令和2年度に投稿した論文の修正作業を進め,早い段階で掲載につなげ,令和2年度に購入したインドネシア村落可能性調査(PODES)のデータ分析を継続していく。加えて,新型コロナウイルスが収束した段階で,インドネシア・スマトラ島でのフィールド調査を再開する予定である。具体的には,スマトラ島中北部に長期滞在し,現地のアブラヤシ生産者や流通業者,工場経営者に対してインタビュー調査を行う。 また,これまでの研究成果と上記の調査結果を踏まえ,本研究の主題でもあるインドネシアのパーム油産業における巨大フードシステムの再編と小農社会の構造変化に関する論文を作成し,英語圏の学術雑誌に投稿する予定である。
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