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2020 年度 実績報告書

細胞内へ侵入したB型肝炎ウイルス輸送動態の時空間的解析

研究課題

研究課題/領域番号 20J00868
研究機関九州大学

研究代表者

岩本 将士  九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2023-03-31
キーワードHBV
研究実績の概要

B型肝炎ウイルス (HBV)は感染受容体NTCP、受容体共益因子EGFRを利用して標的細胞への吸着・侵入を果たす。本研究では細胞内侵入後のHBV感染機構の解析を行った。HBVウイルスエンベロープを模倣したペプチドプローブ(preS1-probe)とHBV感染許容性細胞株を用いた免疫蛍光法解析により、細胞内侵入後のウイルス局在変化を解析した。細胞へpreS1-probeを吸着させ、その後継時的にpreS1-probeおよびEGFRの局在を観察し、初期エンドソーム、後期エンソドームおよびリソソームとの共局在を評価した。本研究ではさらに、これらエンドソームとの共局在を定量可能な解析プログラムを利用し、継時的にpreS1-probeの局在変化を定量することで、ウイルス輸送動態を評価した。興味深いことに、EGFRは細胞表面HBVの細胞内侵入を媒介するが、細胞内へ侵入した後も各エンドソームでHBVと共局在していた。またEGFRを活性化するリガンド刺激によりHBV感染と細胞内への侵入が促進される条件下において、細胞内ウイルス輸送動態も大きく異なっていたことより、EGFRはHBVの細胞内動態も制御する可能性が考えられた。定常状態とリガンド処理条件下でのHBVと各エンドソームとの共局在定量データを用いて、ウイルスの輸送動態変化を記述した数理モデルのパラメータを推定し、確率シミュレーションを実施した。この解析により初期エンドソーム以降のHBV輸送動態が細胞へのウイルス感染成立に関わる可能性が示唆された。これら仮説を検証するために、細胞内動態を変化させるEGFR変異体を作成した。このEGFR変異体は細胞内へ侵入後に初期エンドソームに蓄積し、後期エンドソームへの輸送が著しく減少する。変異体EGFRとHBVは初期エンドソーム以降の経路への輸送が減少し、HBV感染も低下した。以上の結果はHBVが細胞内エンドソーム輸送にEGFRを利用しており、初期エンドソーム以降への輸送動態がHBV感染成立に大きく寄与することを示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者のこれまでの研究により、HBVは細胞内侵入後に継時的にエンドソームを輸送されており、これがEGFR依存的であることを示した。また初期エンドソーム以降の輸送動態がHBV感染に寄与することを細胞培養系および実験データより得られたパラメータを用いた数理解析により明らかにした。EGFRの初期エンドソーム以降の輸送を制御する宿主因子のうち、発現量の減少によりHBV輸送およびHBV感染を変化させる因子を予備結果として既に得ており、本課題は順調に進行していると考えられる。

今後の研究の推進方策

来年度では細胞内侵入後のHBV輸送動態に寄与すると考えられる宿主因子の同定とその制御機構の解析を進める。またこの宿主因子もしくはEGFR輸送動態を標的とする阻害剤のHBV感染阻害活性を評価し、既存とは異なる新しい作用機序を有したHBV阻害剤の提案を試みる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Identification of novel avian and mammalian deltaviruses provides new insights into deltavirus evolution2021

    • 著者名/発表者名
      Masashi Iwamoto, Yukino Shibata, Junna Kawasaki, Shohei Kojima, Yung-Tsung Li, Shingo Iwami, Masamichi Muramatsu, Hui-Lin Wu, Kazuhiro Wada, Keizo Tomonaga, Koichi Watashi, Masayuki Horie
    • 雑誌名

      Virus Evolution

      巻: 7 ページ: veab003

    • DOI

      10.1093/ve/veab003.

    • 査読あり / 国際共著
  • [図書] Elucidation of hepatitis B virus invasion control mechanism by host protein kinase2021

    • 著者名/発表者名
      Masashi Iwamoto
    • 総ページ数
      3
    • 出版者
      Science Impact Ltd

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公開日: 2021-12-27  

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