現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Kif3bヘテロマウスとKif17ミュータントマウスが実際に統合失調症の表現型を示すか検証することを中心に研究を行った。具体的には、オープンフィールド実験と高架式十字迷路実験による運動機能・情動行動の変化と不安様行動の発現の有無を調べ、スリーチャンバー社会行動実験により社会性が低下しているか検討した。さらには新規物体認識実験により新規物体の探索意欲や自発性、バーンズ迷路実験により空間認知能力、8方向迷路実験により作業記憶に異常が見られるかを観察した。またプレパルスインヒビション実験を行い、統合失調症で見られるプレパルス抑制の減弱度合いを解析した。上記の行動解析を総合的に検討したところ、Kif3bヘテロマウスは統合失調症様の表現型を示す新規のモデルマウスといえるものであり、さらにこのマウスに統合失調症患者の血中で減少することが知られているベタインを餌に混ぜて与えることで、統合失調症様の表現型が改善されることを発見し学術論文にまとめて発表した(S. Yoshihara, X. Jiang, M. Morikawa, et al., Cell Reports 35(2) 2021)。また日本神経科学大会と日本生物学的精神医学会にて口頭発表を行った。Kif17ミュータントマウスの結果については学術論文の投稿準備をしている。また海馬神経細胞の樹状突起においては局所でKIF17が分解・合成されることがマウスの脳高次機能を維持していることを同定し、学術論文にまとめて発表した(S. Iwata, M. Morikawa, et al., Science Advances 6(51) 2020)。またマウスの海馬から一次培養系を確立し、免疫細胞化学的にNMDA受容体の2つのサブユニットNR2AとNR2Bの細胞内局在観察を行ったところ、NR2AとNR2Bがともに減少していることが分かった。
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