研究課題/領域番号 |
20J00904
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山口 健治 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | オペラント行動 / 般化 / 弁別 / 習慣行動 / 目的的行動 |
研究実績の概要 |
令和3年度は前年度から引き続き、刺激弁別および習慣行動を形成するオペラント行動実験課題を実施することで、刺激弁別と習慣形成に寄与する学習メカニズムを調査する実験を行った。 本実験課題として、訓練を多数繰り返すことで習慣行動が形成される変動比率スケジュールと、初期訓練段階から習慣行動が形成されやすい変動時隔スケジュールで、弁別刺激として0.9kHzの音刺激(S+)を用いてそれぞれ訓練した。また、それぞれの訓練セッション3回に1回の割合で、強化が得られないS-の音(0.9kHzより高い4音)を弁別刺激として提示した般化テスト試行を入れたプローブセッションを実施した。訓練及び般化テストの終了後、低価値化実験を行い、両群とも習慣行動が形成されていたことを確認した。 般化テストの結果としてそれぞれの弁別刺激に対する反応割合を解析すると、変動比率スケジュール群ではS+を頂点として高さの近い音から順に高い反応割合を示していたが、変動時隔スケジュール群ではS+のみ反応割合が高く、それ以外のS-同士では同程度の水準で互いに有意差も見られなかった。このことから、連合構造が同じ習慣行動であっても、訓練スケジュールの違いによって弁別刺激特性の中で異なる手がかりを参照して学習を行うことがわかった。それぞれの弁別刺激特性学習の違いとして、変動比率スケジュールでは一律に報酬が得られないS-の中でも、より音の高さがS+に近いS-に多く反応したことから、音の高さという弁別刺激特性の学習が確実に進んでいたと言える。対して変動時隔スケジュールでは報酬を得られるS+と得られないS-での弁別のみ進んでいたことから、S+を排他的に学習していた、もしくはよりラフに音の違いを学習していたことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3年度は前年度確立した実験装置、訓練手法、訓練パラメータを用い、刺激弁別および習慣行動を形成するオペラント行動実験課題を実施することで、刺激弁別と習慣形成に寄与する学習メカニズムをさらに追及していくことが出来た。 本実験課題の結果から、連合構造が同じ習慣行動であっても、訓練スケジュールの違いによって弁別刺激特性の中で異なる手がかりを参照して学習を行うことがわかった。この結果は現在まで報告されていない、連合学習における新たな発見である。加えて、それぞれの弁別刺激特性学習の違いとして、変動比率スケジュールでは一律に報酬が得られないS-の中でも、より音の高さがS+に近いS-に多く反応したことから、音の高さという弁別刺激特性の学習が確実に進んでいたことが考えられる。一方、変動時隔スケジュールでは報酬を得られるS+と得られないS-での弁別のみ進んでいたことから、S+を排他的に学習していた、もしくはよりラフに音の違いを学習していたことが考えられる。これらの考察についてもこれまでの研究からは推察できなかった内容であり、論文にまとめて報告する目途が立った。これらのことから、本研究課題の研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の実験として、訓練を多数繰り返すことで習慣行動が形成される変動比率スケジュールと、初期訓練段階から習慣行動が形成されやすい変動時隔スケジュールで、弁別刺激として0.9kHzの音刺激(S+)を用いてそれぞれ訓練し、強化が得られないS-の音(0.9kHzより高い4音)を弁別刺激として提示した般化テスト試行を入れたプローブセッションを実施した。般化テストの結果としてそれぞれの弁別刺激に対する反応割合を解析すると、変動比率スケジュール群ではS+を頂点として高さの近い音から順に高い反応割合を示していたが、変動時隔スケジュール群ではS+のみ反応割合が高く、それ以外のS-同士では同程度の水準で互いに有意差も見られなかった。 今後はそれぞれの弁別刺激特性の学習の特徴を追求する実験を実施していく。これまではマウスにとって聞こえづらい低い音をS+として用い、より聞き取りやすい高い音S-と区別させて訓練することで、元々の刺激強度が弱い刺激であってもより強度が強い刺激よりも反応するようになる弁別を行わせ、刺激強度が強い刺激に対して反応が増加する要素を排除していた。しかし続く実験では、あえて聞こえやすい高音をS+とし、聞こえにくい低音をS-として音の高低を逆転させて用いることで、変動比率スケジュールと変動時隔スケジュールそれぞれで、どちらがより刺激強度に敏感であるのかを調査する。これによって、それぞれのスケジュールにおける弁別刺激特性学習の特徴を追求することが出来る。 十分な結果が得られたら、令和4年度中に国際専門誌に論文を投稿し、出版を目指す。
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