令和4年度は前年度から引き続き、刺激弁別および習慣行動を形成するオペラント行動実験課題を実施することで、刺激弁別と習慣形成に寄与する学習メカニズムを調査する実験を行った。本実験課題として、訓練を多数繰り返すことで習慣行動が形成される変動比率スケジュールと、初期訓練段階から習慣行動が形成されやすい変動時隔スケジュールで、弁別刺激として特定の高さの音刺激(S+)を用いてそれぞれ訓練した。また、それぞれの訓練セッション3回に1回の割合で、強化が得られないS+以外の高さの4音(S-)を弁別刺激として提示した般化テスト試行を入れたプローブセッションを実施した。訓練及び般化テストの終了後、低価値化実験を行って両群とも習慣行動が形成されていたことを確認した。 般化テストの結果としてそれぞれの弁別刺激に対する反応割合を解析すると、変動比率スケジュール群ではS+を頂点として高さの近い音から順に高い反応割合を示していたが、変動時隔スケジュール群ではS+のみ反応割合が高く、それ以外のS-同士では同程度の水準で互いに有意差も見られなかった。先行研究では変動時隔スケジュールにおいて般化勾配が鋭くなることから、変動比率スケジュールに比べて刺激性制御が強くなると言われてきた。しかし今回、S+とS-の弁別しやすさによってVI・VRそれぞれの般化勾配の鋭さ、弁別の正確性が変化することを発見した。 また、このような行動の神経メカニズムの解明のため、脳の特定領域に局所的に薬剤を投与する実験系と、光学装置によって神経活動を記録することができるファイバーフォトメトリーシステムの立ち上げを行った。
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