研究課題/領域番号 |
20J00940
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
和久井 洋司 東京理科大学, 理学部第一部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 放物型方程式 / 走化性モデル / 漸近挙動 / 解の安定性 / 有限時間爆発解 |
研究実績の概要 |
本研究では、走化性モデルや圧縮性流体力学に関連した非線型放物型偏微分方程式、特に放物型・楕円型偏微分方程式の連立系で与えられるKeller-Segel系の最も単純なものの一つである移流拡散方程式を主たる対象とし、その類似の方程式の解の非有界性や有界性といった性質や時間大域挙動を詳細に解析することが大きな目的である。本年度得られた結果は以下の通りである。 (1) 移流拡散方程式の初期値問題において非局所項を含む場合であっても、その時間局所解の存在は局所的な特異性の許容度が支配的となり、解の存在時間の評価は初期値のノルムによって与えられることを示した。その解析手法は、一様局所Lebesgue空間における熱半群の作用とその評価を基礎にしたもので、通常のLebesgue空間を基礎とした枠組みとの違いを見出した。また、一様局所Lebesgue空間を導入したことにより、移流拡散方程式の構造から自然に導出される定数定常解を関数解析学の枠組みにおいて統一的に扱うことができ、初期値の総質量や可積分性に大きく依存した既存のLebesgue空間の枠組みでは扱うことができなかった自然な解を取り入れることができた。さらに、定数定常解の安定性を自然な摂動の枠組みにて考察し、対応する定数の値の範囲によって安定・不安定が分類されることを示した。 (2) 移流拡散方程式の初期値問題において非有界な解の形状について考察し、尺度不変量に対する定量的評価の導出を行った。本年度は、後方自己相似変換を用いることでその形状の詳細な解析を行い、有限時間爆発解がもつべき尺度不変量に対する評価を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響で、国際的な研究集会や研究打ち合わせを含む海外渡航、および国内での対面形式における研究打ち合わせが行えなかった影響により、当初予定していた計画を全面的に実施することができなかったが、代替手段としてオンラインによる打ち合わせを行い、対面形式の研究打ち合わせに向けた議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は次の通りに推進して行く予定である。 (1)移流拡散方程式の初期値問題の局所可積分性に着目した枠組みにおいて得られた考察をもとに、空間遠方で減衰しない解の枠組みにおいてその特殊解の存在と非存在について考察し、その漸近形を特定する。その際に、定数定常解の安定性との関連を明確にする。 (2)移流拡散方程式の初期値問題において、有限時間爆発解だけでなく時間大域的に存在する非有界な解の形状の解析を行う。その際に、空間2次元で知られていることと高次元との違いをできる限り明確に定量的に特徴付けすることを試みる。 (3)移流拡散方程式の初期値問題の定数定常解の安定性において本年度得られた結果をもとに、臨界値における安定性の解析を行う予定である。 国外研究者との研究に関する打ち合わせは新型コロナウィルス感染症拡大の観点から、準備段階ではオンラインによる打ち合わせを積極的に行う予定である。
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