近年、リボソームが環境に応じてダイナミックに組成を変化させ、翻訳や細胞の生育を制御することが示唆されつつある。しかし、その詳細な機構は依然としてほとんど明らかとなっていない。本研究では、申請者が大腸菌で同定した嫌気環境特異的な3つのrRNA修飾による翻訳制御機構の解明を進めた。採択前までの申請者の研究により、これらの修飾は嫌気環境依存的に修飾率が上昇し、リボソームの翻訳能を向上させて細胞の生育に寄与することが示唆されていた。また、前年度までの構造学的および生化学的な解析により、3つの修飾がPTCの構造安定化を通じてペプチド転移反応効率を向上させ、嫌気環境での細胞生育に貢献していることが示唆された。また、RlmPの最小基質として23S rRNAのHelix 89を中心とする100base程度のRNAを特定した。 本年度は、RlmPの結晶化による構造解析を中心に進めた。当初通常の環境でapo-RlmPを用いて結晶化スクリーニングを行ったが、タンパク質結晶を得ることはできなかった。そこで、嫌気チャンバー内でholo-RlmPの再構成を行った上で結晶化スクリーニングを行った。その結果、いくつかの条件でタンパク質結晶らしきものを検出することができたが、高解像度の回折像を得ることはできなかった。また、最小基質のRNAを等モル混ぜた条件でも結晶化スクリーニングを行ったが、タンパク質結晶を得ることはできなかった。そこで、Cryo-EMによるRlmPの構造解析を試みた。まず、apo-RlmPについて酵素の基質となるSAMやMeCbl、rRNA最小基質などの添加の有無により幾つか条件を振りgridの作成およびCryo-EMによる試測定を行った。その結果酵素らしき粒子がMicrograph上で確認できたため、現在pickingの条件などの検討を進めている。
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