研究課題/領域番号 |
20J00973
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山本 浩太郎 千葉大学, 薬学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 植物二次代謝 / 異形細胞 / アルカロイド / 一細胞メタボロミクス / 一細胞トランスクリプトミクス |
研究実績の概要 |
植物の組織内には周囲の細胞とは形、大きさ、構造、内容物などが異なる細胞が存在する場合があり、これらの細胞を異形細胞と呼んでいる。これまで代謝に関与するのではないかと考えられてきた異形細胞であるが、その役割・発生過程・類似性・二次代謝との関連性などは未だによくわかっていない。本研究では多様な植物に存在する異形細胞の形態分化と代謝分化の関連性を明らかにする。基礎研究で理解した二次代謝を利用して、有用代謝物質の生産に関わる応用研究にも試みる。主要な研究植物として、VinblastineやVincristineなどの抗がん剤となるTerpenoid indole alkaloid(TIA)をはじめ、多様な二次代謝産物を生産することで著名な薬用植物であるニチニチソウを用いる。このニチニチソウは異形細胞に複数のTIAを蓄積しているので、TIA代謝と異形細胞の関連性を調べるのに適した実験材料である。ニチニチソウの知見を元にTIAを生合成する様々な植物の異形細胞における代謝機構も調べる。 ニチニチソウの細胞や組織レベルでのオミクスデータを駆使して、ニチニチソウの異形細胞におけるTIA代謝に関与するSerpentine synthaseやその他複数の酵素を同定している。その他の植物に関しては、キョウチクトウ科ツルニチニチソウやアカネ科の植物における組織レベルでのオミクスデータを取得してきた。ニチニチソウの近縁種であるツルニチニチソウについては、UVで励起して蛍光を放つTIA物質の情報を元に異形細胞を分類し、一細胞レベルでメタボロームデータの取得を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、ニチニチソウの異形細胞に局在する新規TIA合成酵素をin vitro assayにより同定することに成功した。さらに、ニチニチソウだけでなく、近縁種の植物に関しても細胞・組織レベルでのオミクスデータの取得をはじめられたため。
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今後の研究の推進方策 |
抗がん剤ともなるVinblastineの生合成はニチニチソウの異形細胞で起こると考えられる。今後、一細胞オミクスデータを用いてVinblastine生合成経路の詳細な代謝機構を明らかにしていく。それと同時に、実験使用可能な植物において細胞・組織レベルでのオミクスデータの取得を進める。 現在、ニチニチソウ以外の植物のTIA生合成機構を調べるために、キョウチクトウ科やアカネ科などの様々な植物における一過的過剰発現・ノックダウンの実験系の確立にも取り組んでいる。オミクスデータの取得が進んだ植物において、大腸菌・酵母・タバコを用いたin vitroでの実験と共に、in vivoでも酵素・輸送体・転写因子の探索のための実験を進める。また、これらの方法によって発見された遺伝子に関して、植物体での一過的過剰発現の実験系を用いて細胞内でのタンパク質の局在を調べる。
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