本研究では、苔類ゼニゴケを用いて、ガス交換系を構成する間隙と孔の発生の分子機構、孔の開閉制御の分子機構の解明を目的として研究をおこなってきた。最終年度では、既に順遺伝学的に得られていた間隙形成の変異体5種類について、次世代シーケンサーを用いた解析を行い、候補となる原因遺伝子の単離を試みた、これらの結果を踏まえて、過剰発現によって気室の形成を抑制する因子、すなわち気室形成を負に抑制する因子を同定し、この因子が転写因子である可能性が高いことから、ドメイン構造を含む機能の解析、維管束植物との共通性などを解析した。その結果この転写因子はメリステム近傍で働くことで気室の形成を抑制している可能性が高まった。 孔の応答解析においては、高感度サーモグラフィーと顕微レンズを組み合わせることによって、条件検討を行い、孔とその周辺の温度変化を検出することに成功した。また、この系と光合成活性の測定装置を用いて、間隙と孔のガス交換効率の測定を行った。また、シロイヌナズナにおいて孔の応答を制御する化合物をゼニゴケに処理し、既にシロイヌナズナで知られているタンパク質の修飾や応答が見られるかを観察し、ゼニゴケでの分子機構の理解や維管束植物との共通性は明らかになりつつある。
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