研究実績の概要 |
本研究課題は, 一般の半線形楕円型方程式に対し, 解の安定性を用いて, 関連する定性的性質を導出することを目的としている. 本年度は, まず研究の土台として, 非線形項を具体的に設定した半線形楕円型方程式を対象に, 解の安定性や動径対称解の族がなす層構造に関して研究を開始した. 具体的には, 次の二点に関して結果を得た: (A)分数冪の重み付きLane-Emden方程式の解の安定性 (B)非コンパクトなリーマン多様体上のLane-Emden方程式の正値動径対称解の族がなす層構造 以下では, 特に(A)に関する研究成果について説明する. (A) については, 分数冪の重み付きLane-Emden方程式に対して, 解の安定性に関する特徴付けを行うことを目標に研究を行った. 本研究は, 生駒典久氏(慶応義塾大学), 川上竜樹氏 (龍谷大学)との共同研究である. 既存の研究では, 分数冪のLane-Emden方程式の解の安定性に関しての特徴付けが行われ, 動径対称解が安定となる非線形項の指数に関しての必要十分条件が得られていた. 一方で, 分数冪の重み付きLane-Emden方程式に関しては, 解の正値性や特異解の存在等は調べられていたが, 解の安定性に関する特徴付けは行われていなかった. 本研究では, 分数冪の重み付きLane-Emden方程式を対象に, 解の安定性に関する特徴付けを行い, 実際に動径対称解が安定となる非線形項の指数に関しての必要十分条件を導出することに成功した. また, 安定解の定性的性質に関しても研究を行い, 特異解の安定性を用いることで, 安定な動径対称解の族が層構造をなすことも証明した. 以上の本結果は, 解の不安定性に関しては, 論文に投稿し, 査読を終え, 出版が確定している. 解の安定性に関しては, 現在論文としてまとめ, 投稿中である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては, 本年に扱った方程式を対象に, 解の安定性や関連する性質を調べる予定である. 具体的には, 方程式を扱う空間を非コンパクトなリーマン多様体として, Lane-Emden 方程式の解の安定性や動径対称解の族がなす層構造に関して研究を行う予定である. 以下, 本研究の内容を述べる. 非コンパクトなリーマン多様体上の Lane-Emden 方程式に関する既存の研究としては, Berchio-Ferrero-Grillo (2014) によって, 動径対称解の原点での値が十分小さいという制限の下での解の安定性や動径対称解の族がなす層構造が示されていた. 一方で, ユークリッド空間上の Lane-Emden 方程式の結果からの類推として, 非線形項の指数が十分大きい場合には, 動径対称解の原点での値に関する制限を課さずに解の安定性や動径対称解の族がなす層構造が得られることが推測され, 上で挙げた論文においてもオープンプロブレムとして言及されている. 実際, 非コンパクトなリーマン多様体の代表的な空間である双曲空間では, 非線形項の指数が十分大きい場合には, 動径対称解の族が層構造をなすことが, 数値計算では既に知られている. 本研究では, 非コンパクトなリーマン多様体上での Lane-Emden 方程式に対し, 非線形項の指数が特に Joseph-Lundgren 指数以上の場合を扱い, 解の安定性や動径対称解の族がなす層構造を調べる予定である. 本研究に関しては, 今年度においても部分的な結果を得ており, 現在論文としてまとめている段階である. 今後は, 今年度に扱えなかった部分を中心に研究を推進していく予定である.
|