最終年度(三年目)の2022年度の実績は、学会誌論文1本、研究発表3つである。 学会誌論文番号1では、琉球諸語の「確認要求」形式について明らかにした。琉球諸語の場合、「確認要求」は、質問文として表現されるだけでなく、知識確認要求の用法を実現させる形式等が、質問文としての確認要求文ではなく、平叙文のモダリティを表していること、又そのモダリティも「話し手と聞き手の情報に対する理解、情報を正確に伝えるために関わる意味」として存在している傾向のあることを明らかにした。 研究発表番号1では、比較研究も含めてこれまで研究されることはなかった平叙文のモダリティである必然表現文について明らかにした。琉球諸語の場合、①「しなければならない」類にあたる形式が二つ以上あること、②客観的な意味(必然・必要)から主観的な意味(評価、意志)へと移行する傾向のあること等の特徴のあることを明らかにした。研究発表番号2では、語用論的な意味・機能との関係で研究されて来なかった平叙文のモダリティである可能表現文について明らかにした。琉球諸語の場合、①条件可能と能力可能が別々の形式によって基本的に表現されること、②可能が、「したくない」などの話し手の評価や「しようとする」「頑張る」などの努力的なかまえと絡み合って表現される場合のあること等の特徴のあることを明らかにした。研究発表番号3では、琉球語研究でほとんど取り上げられて来なかった実行文について明らかにした。最終年度は、これまでの琉球語研究において取り上げられて来なかった平叙文の可能表現、必然表現、実行文の語用論的な意味・機能との関わり等のモダリティ研究において重要な形式の特徴、共通・差異性、発展の傾向について明らかにすることができた。そのことを通して、琉球語のモダリティの比較研究の一つのモデルを示すことができたという点でも一定の成果をあげることができた。
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