研究課題/領域番号 |
20J01233
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹垣 淳也 立命館大学, 立命館大学総合科学技術研究機構, 特別研究員(PD) (10824055)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | レジスタンス運動 / レジスタンストレーニング / リボソーム / 筋タンパク質合成 / 重水 |
研究実績の概要 |
骨格筋量を増大させる手段として、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)は非常に有用である。レジスタンストレーニングによる筋量の増加は、細胞内でタンパク質合成を担っているリボソームの活性化による、筋細胞の活発なタンパク質合成の累積によって得られる。本研究は、予めリボソーム量を増加させておくことにより、運動による筋タンパク質合成作用を高め、トレーニングによる筋量増大効果の向上を狙うものである。 本年度は、リボソーム量を増加させておくことでレジスタンス運動効果が高まるか否かの検討を行った。ラットを対象に、トレーニングを実施させ、リボソーム量が増加している3Bout目と、増加していない1Bout目の筋タンパク質合成応答を比較した。その結果、運動によって両群とも同程度筋タンパク質合成が増大しており、群間差は認められなかった。その要因としては、運動を繰り返し実施することにより運動によるシグナルの活性化が鈍化することが挙げられる。従って、リボソーム量を増加させた上で、シグナル応答を同程度引き起こすような介入が必要となると考えられる。また、並行して、重水を用いた筋タンパク質合成方法の検討も実施した。ラットを対象に重水を投与し、アミノ酸を摂取させ、2・4時間後に筋を摘出し、解析を行った。その結果、プラセボと比較してアミノ酸を摂取させたラットで筋中の重水素を取り込んだアラニンの含有比が高かったことから、筋タンパク質合成が亢進していたことが示され、評価系が機能していることが検証された。この結果から、ラットを用いた長期間のトレーニング介入効果の検証並びに、今後実施予定のヒト生体を対象とした検討を行う上での基盤が築かれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初本年度中に、リボソーム量の増大による運動の急性効果および長期トレーニング効果を検証する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、後者の評価に必要となる長期的な筋タンパク質合成の手法をご教示頂く予定であったイギリス・ノッティンガム大学への訪問が遅れ、計画に遅れが生じた。さらに急性応答に関してもさらなる検討の余地が生じ、目標の完遂に至らなかったことから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により、リボソーム量を増大させる手段としてトレーニングを用いた場合、それに伴って運動後のシグナル活性化応答が減弱するため、結果として筋タンパク質合成の向上が得られないことが示唆された。従って、次年度は先ず、リボソーム量を増大させつつ、運動によるシグナル活性化応答の減弱を生じさせない手段を模索する、具体的には、リボソーム量を増大させた後に脱トレーニング期間を設けることなどにより、シグナル応答性を改善させることを計画している。それらが検証された後、本年度の取り組みによって得られた重水を用いた長期の筋タンパク質合成作用の評価系を用いて、トレーニング効果の検証と、ヒト生体を対象とした応用を試みる。
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