レジスタンストレーニング(いわゆる筋力トレーニング)は筋量増加の手段として、スポーツ・リハビリテーションの現場で広く用いられている。単回のレジスタンス運動は、骨格筋における翻訳を活発化させ、筋タンパク質を蓄積させるが、本研究は、特に翻訳容量を規定するリボソームの量に着目し、運動効果を高めることを目指すものである。 第3年目では、第2年目に引き続き重水を用いた筋タンパク質合成の測定手法の習得に取り組んだ。前年度は、主に必須アミノ酸の摂取に伴う筋タンパク質合成を賦活したコンディションで、重水による新規合成タンパク質のラベリングを行い、筋タンパク質合成速度の測定を試みた。これに対して第3年目では、下肢ギプス固定モデルを活用し、筋タンパク質合成速度が低下したコンディションを作成し、同様に重水を用いて筋タンパク質合成速度の低下の検出について取り組んでいる。昨年と同様に、本サンプルに関してもイギリス・ノッティンガム大学と共同し、解析を進めている。 また、上記の遂行に加えて、ヒト生体を対象にリボソーム量の多寡が筋タンパク質合成に及ぼす影響についても検討を行った。健常な男子学生を対象に、1日おきにレジスタンス運動を3回実施させ、1週間の筋タンパク質合成がリボソーム量に応じて変化するか否かを検証した。サンプルとして取得した外側広筋に含まれる、リボソーム構成タンパク質の一つであるrpS6タンパク質発現量についてはこれまでに分析を完了し、筋タンパク質合成速度の測定についてはイギリス・ノッティンガム大学にて分析を進めている。これまでに外側広筋に含まれる重水素を取り込んだアラニンの含有率と、唾液サンプルを用いた重水エンリッチメントの分析は完了しており、現在は測定値から合成速度の算出を試みている。
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