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2021 年度 実績報告書

海馬歯状回におけるリバース伝播の生理的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20J01255
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

大内 彩子  国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2023-03-31
キーワード海馬 / 歯状回 / 苔状細胞 / 鋭波リップル / 機械学習
研究実績の概要

神経情報は、何層もの神経回路を経て階層的に伝達されることで、記憶や学習などの高次機能が発揮される。しかし、各層に含まれる細胞数は一様ではなく、極めて少数の細胞で構成される層がある。このような小さな層を通過する神経情報がどのように処理されるのかについては明らかではない。本研究では、海馬CA3 野の複数の錐体細胞が同時に活動することによって生じる鋭波リップルが歯状回へ伝達される経路に着目した。この二領域の神経路の中間層として位置するのが苔状細胞であり、その数はCA3 野や歯状回に存在する神経細胞の数よりも圧倒的に少ない。
過去の知見より、鋭波リップルの波形は多様であり、波形自体に海馬情報のコンテンツが反映されることが示唆されている。私は、in vitro パッチクランプ記録法により鋭波リップル発生時における苔状細胞の閾値下膜電位を最大5 細胞まで一斉に観察し、独自に開発した機械学習手法を組み合わせた。そして、鋭波リップルによって活動する苔状細胞の膜電位と、鋭波リップルの波形を関連付けることで、鋭波リップルの神経情報がどのように苔状細胞に伝達され、符号化されるのかを調べた。

私は、異なる波形同士を関連付けて学習する機械学習手法を開発し、苔状細胞の膜電位情報から鋭波リップルの情報を再現することに成功した。本モデルでは1つの苔状細胞の波形から、1つのデータセットで記録された全鋭波リップルの9.2%(平均値)を予測することができた。また、同時に記録する苔状細胞の数が多いほど、予測できる全鋭波リップルの割合はほぼ直線的に増加した。その結果、同時に記録した5つの苔状細胞の膜電位情報によって、全鋭波リップルの30%以上が予測可能であることを明らかにした。
以上より、鋭波リップルの情報が苔状細胞に効率的に分配され、苔状細胞同士が連関しながら海馬の情報を符号化することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度までにまとめた内容を再解析し、再度論文としてまとめた。また、苔状細胞にArchを導入するためのアデノ随伴ウイルスベクターの投与量・期間・座標の検討を行った。2種類のウイルスを投与することで苔状細胞にArchを発現させることができ、ウイルスの組合せおよび投与量・期間・座標も概ね確定できている。

今後の研究の推進方策

苔状細胞にArchを再現性高く発現させることに成功した後、歯状回にオプトファイバーを埋め込み苔状細胞の神経活動を抑制できるかを確認していく予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Neural mechanisms underlying spatial navigation in the hippocampal-entorhinal circuit2023

    • 著者名/発表者名
      Ouchi, A., Fujisawa S.
    • 学会等名
      The 46th annual meeting of the Japan Neuroscience Society
  • [学会発表] 海馬ー嗅内皮質回路における空間ナビゲーションの神経機構2023

    • 著者名/発表者名
      大内彩子、藤澤茂義
    • 学会等名
      「時間生成学」2022年度第2回領域会議
  • [学会発表] Temporal coding for spatial navigation in the hippocampal entorhinal circuit2022

    • 著者名/発表者名
      Ouchi, A., Fujisawa S.
    • 学会等名
      "Chronogenesis" The 1st Okinawa International Symposium
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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