惑星形成の後期段階における大規模な衝突現象は,惑星が初期に獲得していた大気の大部分を消失させるだけでなく,その惑星の内部・大気構造も変化させる.このような巨大衝突を経てどのように大気組成や惑星構造が変化を理論的に解明することにより,惑星大気組成を通じて岩石惑星の形成起源を制約することが期待される.本計画では水素大気を持つ岩石惑星に対する衝突現象の計算を行い水素大気の流出量を求めるため粒子法を用いた数値流体シミュレーションを実施した.前年度までの数値シミュレーション結果を用いて,惑星内部構造および大気構造の組成の解析を行い,衝突直後の惑星の状態を決定して長期進化における大気の安定性を調べた.また,衝突直後の大気組成について化学平衡計算も実施し,衝突後の大気組成の変化についても調べた.その結果,衝突後に大気を多く失った場合に,原始惑星系円盤由来の大気と岩石コアの蒸発大気が混合する可能性を示唆した.さらに,円盤由来の大気と岩石蒸気が反応することにより,大気中に水成分が生成することも示唆された.主星からのXUV照射による光蒸発を考慮した大気進化モデルを構築し,大気の長期安定性を調べた結果,衝突による大気組成の変化が残る場合には水成分に富む大気が形成する可能性を示唆し,系外惑星大気組成と惑星形成過程を繋げうる成果を得ることができた.本研究の成果は衝突研究会などの国内会議や国際会議(The 9th East Asian Numerical Astrophysics Meeting)にて発表を行った.
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