研究課題/領域番号 |
20J01281
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
山本 寿子 東京女子大学, 現代教養学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 多感覚知覚 / 認知発達 / 情動 / 聴覚 / 視覚 / 心の理論 / オンライン実験 |
研究実績の概要 |
本研究は,視聴覚感情知覚の発達過程の解明を行い,さらにその基礎的知見を,コミュニケーションに困難をきたす人々のニーズにこたえる実践的研究につなぐことを大きな目的としている。令和3年度は2つの観点から,視聴覚感情知覚の発達過程の解明を目指した。 まず,視聴覚感情知覚と他者の内的状態を理解する能力の関連を調べる研究を行った。その結果,年齢とともに声優位性が上がり,誤信念課題,隠れた感情課題といった他者の内的状態の理解が進むという発達が確認された。しかし,「顔(声)の重視しやすさ」と他者の内的状態の理解との間には単体での相関は見られなかった。 次に,視聴覚感情知覚の発達のメカニズムを検討する研究を行った。声に基づく判断が年齢とともに増加する可能性の1つに,児童期に視覚情報の重要性が年齢とともに下がるというように,感覚情報の重みづけが年齢とともに変化するから,という可能性があげられる。この可能性を検討するため,顔と同じ視覚情報である身体と声からの感情知覚の発達パターンと,顔と声からの感情知覚の発達パターンを比較した。その結果,幼い子どもは身体と組み合わせられるとむしろ声を重視し,年齢とともに身体を重視するようになるというように,顔と声からの感情知覚で示されていたパターンと真逆の発達が見られた。ここから声優位性の獲得は感覚情報の重みづけではなく,「顔の情報を信じなくなる」「顔によって本心を偽りに使うことの知識」が反映してのものである可能性があることが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は感染症対策のため対面実験が大幅に制限されたものの,オンラインで研究を実施することで,本年度の成果発表に繋がった。また,当初の予定であった視聴覚感情知覚の発達とsocial understanding能力の関連の検討のデータ収集および分析を進めることができ,さらにこの発達の背景を検討する研究まで進めることができた。以上の理由から,研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度は,これまでの研究で明らかにしてきた視聴覚感情知覚をめぐる知見を実践的研究に繋げることを目指す。より広い参加者を対象として視聴覚感情知覚の様式を規定する要因の検討を行い,ソーシャルスキルの変容に関わる実践に繋げる予定である。並行して,昨年度までに収集したデータについての成果発表を進め,知見のまとめを行う。
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