研究課題
本研究課題では、膨潤しない生体適合性に優れた高分子ゲルの作成を目的とする。本年度においては、ゲルを凍結-融解させることで、蜂の巣状の多孔質構造を有するゲルの作成に成功し、ゲルの非膨潤特性のみならず、10 μm 程度の粒子の優れた透過性、圧縮・引張時のタフ化も実現した。本研究では、4 分岐構造を有する2 種類のpoly(ethylene glycol) (PEG) を混合することで形成するテトラPEG ゲルを使用した。昨年度までの研究において、ゲルを純水に浸漬させると、通常のゲルでは従来通り膨潤する一方、希釈条件下では収縮することが判明し、その収縮に伴い相分離構造が発現することを見出した。そこで、本相分離構造の形成を強引に誘起させるため、凍結融解法を用いた多孔質構造の導入を試み、ゲルの内部構造を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。高分子の重なり合い濃度(c*)以上で作成した凍結融解ゲルは、特徴的な構造が観察されなかった一方、c* 以下で作成した凍結融解ゲルは、蜂の巣状の多孔質構造が観察された。これは、高分子と水が主に占める領域が局在するためである。さらにこの多孔質構造は、細胞と同程度の粒子を透過したことから、優れた物質透過性を有することが示唆された。さらに本相分離ゲルに、細胞接着性ペプチドを導入し、ラット皮下への埋植を行うと、埋植周囲から細胞の遊走を達成し、脂肪様組織と血管様構造の形成を達成した。本材料は、完全合成材料からなる細胞遊走を達成した初めての材料であり、今後の組織工学への貢献が期待される。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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ACS Macro Letters
巻: 12 ページ: 510~517
10.1021/acsmacrolett.3c00044
Communication Biology
巻: - ページ: -
ACS Applied Materials & Interfaces
巻: 14 ページ: 35444~35453
10.1021/acsami.2c09906