今年度も感染症により臨海実験所の長期滞在による利用が制限されたため,実験室を主とした研究を進めることとした。前年度に単離し遺伝子型を決定したカジメの配偶体を使用して,掛け合わせる配偶体の個体数による配偶体の成熟率の違いを調べた。雄性配偶体1個体と雌性配偶体1個体と掛け合わせたものから雌雄の配偶体を4個体ずつにまで増やし,4つの実験区(♂1個体x ♀1個体,♂2個体x ♀2個体,♂3個体x ♀3個体,♂4個体x ♀4個体)を設けた。なお,実験には遺伝子型の異なる配偶体を使用し,成熟の有無については顕微鏡下で判断しやすい雌性配偶体の卵形成で評価した。雌雄の配偶体を混合した後,1週間後に卵形成の有無を各区30個体ずつ調べると,どの実験区においても卵を形成した雌性配偶体の割合は80%前後で,明確な差はないことがわかった。また,母藻による配偶体の生長速度についても調べるために,胞子体を6つ使用し,それぞれの配偶体の細胞数の変化を5日毎に計数した。その結果,どの胞子体に由来しても配偶体の細胞数は2から3個程度で,配偶体の生長速度についても親個体の違いがほとんど影響しないことがわかった。幼胞子体の生長を比較にむけて胞子体を培養している最中にあったが,就職に伴い本年度の半ばで特別研究員の資格を辞退することとなった。
|