研究課題/領域番号 |
20J01376
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小野 智弘 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 原始惑星系円盤 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標は、原始惑星系円盤が普遍的に持つリング・ギャップ構造(RG構造)が惑星形成に与える影響を明らかにすることである。この目的を達成するために、3つの課題【1】RG構造がダスト成長に与える影響の解明、【2】RG構造と惑星軌道の共進化に関する研究、【3】RG構造が惑星形成に与える統計的影響の理解、を設定している。これにより、円盤RG構造を考慮した惑星形成論の再構築を目指している。 本研究における主な研究手法は、公開磁気流体コードAthena++を用いた原始惑星系円盤の数値流体計算である。研究員はこれまで2個の追加モジュールを開発し、Athena++に組み込んでいた。1つはダストモジュールで、原始惑星系円盤におけるガスとダストの運動を同時に解くことを可能にする。2つ目は惑星モジュールで、原始惑星系円盤と惑星軌道の進化を同時に解くことを可能にする。当該年度はダストモジュールに改良を加え、新たに小さいダストの場合も対応可能にした。また、惑星軌道の積分方法をより高次のものにすることで惑星モジュールも改良し、3次元空間で長時間に渡る複数惑星の軌道計算を可能とした。 当該年度は、開発したコードを用いて課題【1】と【2】の数値シミュレーションを実行した。惑星と原始惑星系円盤の進化を同時に解くことで、惑星によって形成されるRG構造と惑星軌道の共進化について調べた。2次元計算を広いパラメータ領域で行うことで全体の描像は把握し、3次元計算を適宜行うことで詳細を明らかにした。また、惑星が2個ある場合についても計算を行い、惑星間軌道共鳴がRG構造の進化に与える影響も調べた。さらに、ダストを入れた計算も実行中である。 派生的な研究として、原始惑星系円盤におけるガス渦の新しい散逸機構の発見、磁場が鉛直シアー不安定性に与える影響の調査、惑星が作る衝撃波による円盤加熱といった共同研究も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では課題【1】・【2】が完成しているはずであった。しかし、課題【1】の一部の数値シミュレーションがまだ途中であり、計画から少しの遅れが生じている。これは、コード開発に予定より長い時間を要したことが原因であると考えられる。しかし、開発されたコードは高品質であり、他の研究にも積極的に使用されることが期待できる。そのため、当研究課題の遂行とういう観点から見ると『やや遅れている』と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、課題【1】を行う上で必要な数値シミュレーションを全て終わらせる。その後、シミュレーション結果を解析することで課題【1】の早期完遂を目指す。その後、課題【1】・【2】で得られた結果をまとめた上でモデル化する。このモデルを惑星形成モデルに組み込むことで課題【3】を遂行する。これにより、原始惑星系円盤が普遍的に持つリング・ギャップ構造(RG構造)が惑星形成に与える影響を明らかにするまた、派生的な共同研究も積極的に進めていく。
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