原始惑星系円盤は若い星の周りにある円盤であり、惑星形成の現場である。近年の観測で、多様な円盤構造の存在が明らかになってきた。特に、リング・ギャップ構造(RG構造)は普遍的だ。これらの円盤構造は惑星形成において重要な役割を担うと期待され、円盤構造が与える影響を新たに考慮して従来の惑星形成論を見直す必要がある。本研究の目的はRG構造が惑星形成に与える影響を明らかにすることであった。目的達成のため、3つの課題:『RG構造がダスト成長に与える影響の解明』、『RG構造と惑星軌道の共進化に関する研究』、『RG構造が惑星形成に与える統計的影響の理解』にそれぞれ取り組んだ。これによって、円盤構造を考慮した惑星形成論の再構築、ひいては惑星形成の理解を目指した。 2022年度は、軌道共鳴がRG構造内での惑星軌道に与える影響を数値シミュレーションで調べた。そこにおいて、流体シミュレーションコードAthena++に研究員がこれまでに開発したダストモジュールと惑星軌道モジュールを組み込んだものを使用した。複数惑星の軌道進化と原始惑星系円盤のガス・ダストの運動を同時に解き、惑星間重力相互作用や惑星が作るRG構造が惑星軌道進化に与える影響を広いパラメータ領域で調べた。RADMC3Dコードを用いた輻射輸送計算によって、数値シミュレーション結果の模擬観測を行う工程は未着手だ。今後は未着手の工程や課題、これまでに得た結果の論文化をすみやかに遂行する。 本研究課題に派生して、受入教員である奥住准教授の学生との共同研究、ネバダ大学Zhaohuan Zhu准教授との共同研究も進んでいる。そこにおいて、研究員が本研究課題において開発したAthena++コードのモジュールが活用されている。また、断熱円盤において惑星が作り出す微小構造の発見もなされた。これについては、今後詳細な研究を継続して行っていく予定である。
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