研究実績の概要 |
本研究課題は、加齢によるレジスタンス運動による筋肥大適応応答の低下機序を明らかにすることを目指し、筋タンパク質合成と筋原線維形成機構に着目して検討を行ってきた。 前年度まで、骨格筋のN-WASPが安静時の骨格筋量調節において果たす役割の検討を進めてきたが、本年度は老化に伴う運動抵抗性にN-WASP発現の減少が関連しているか否かを明らかにすることを目的に、N-WASPの発現低下が収縮による筋肥大に及ぼす影響を観察する為の実験を行った。実験はマウスを対象とし、骨格筋へのshRNA発現遺伝子導入によるN-WASP遺伝子のノックダウンが過負荷による筋肥大に影響を与えるか否かを検討した。具体的には、若齢C57BL/6J雄性マウスの両脚の下腿三頭筋にN-WASP遺伝子ノックダウンAAVベクター(対照群にはscramble shRNA発現ベクター)を筋肉注射にて投与し、投与から2週間後にマウスの片側の下腿三頭筋の腓腹筋とヒラメ筋の腱を外科的に切除し(対側脚には偽手術を施した)、その後、2週間通常飼育することで保存した足底筋へ慢性的な過負荷を行った。 その結果、過負荷によって対照群とNWASP-ノックダウン群のマウスの足底筋の湿重量は有意に増加(対照群:42%, N-WASPノックダウン群:49%)したが、筋肥大の程度にN-WASPノックダウンの影響は認められなかった。したがって、N-WASPは収縮による筋肥大に必須の因子ではない可能性が示された。
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