研究課題
本研究は野生動物における化学物質感受性の種差を非侵襲的に評価する新規評価法の確立を目的とする研究である。従来の化学物質評価は侵襲性の極めて高い化学物質生体曝露試験が必須であり、希少な野生動物においては禁忌である事が挙げられる。これに対し本研究は被毛やデータベース等から非侵襲的に入手可能な遺伝子情報を用いて化学物質感受性の種差を評価する事を想起した。化学物質感受性の種差は主に標的分子・代謝酵素の遺伝子種差で決定される。本研究では野生動物に対する非侵襲的な化学物質感受性評価法としてcounter-QSAR (c-QSAR)コンセプトを提唱しその構築を試みた。c-QSARでは各動物のDNA情報から構築した標的分子・代謝酵素3D構造と対象化学物質の結合性をシミュレートし、そのパラメーターと実測値の相関関係を機械学習法で解析する事でタンパク質の3D構造情報から感受性予測を行う。本手法により、被毛等から非侵襲的に入手可能なDNA情報を基に感受性評価が可能となる。当該研究は東京工業大学でのケモインフォマティクス解析と北海道大学獣医学部での実測値測定を申請者自身が両立する分野横断型の研究を想定していたが、コロナ禍による緊急事態宣言により当該研究期間での研究遂行に多大な支障が生じた。当初の研究計画では研究開始時に北大である程度の実測値測定を行ってから東工大での解析を実施する予定だったが、上記から本計画は実質遂行不可能であり計画の変更を余儀なくされた。そこで研究計画を一部変更し、文献ベースで実測値の報告があるヒト・齧歯類での遺伝子変異とこれに伴う表現型の変化を用いて上記c-QSARコンセプトの一先ずの完成を目指した。この結果、単一のアミノ酸変異であっても分子動力学シミュレーションにより得られる性状に大きな差があり、これを用いた機械学習手法により感受性を予測する事が可能という事が明らかとなった。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Pesticide Biochemistry and Physiology
巻: 173 ページ: 104774~104774
10.1016/j.pestbp.2021.104774
Veterinary and Animal Science
巻: 9 ページ: 100095~100095
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