研究課題/領域番号 |
20J01625
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 啓太 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / マテリアルズインフォマティクス / 炭素材料 / 有機結晶 |
研究実績の概要 |
炭素材料はエネルギーデバイスの電極、触媒、構造材料などとして広く応用されている。一方で、複雑な構造を解析するために膨大なデータ量が必要となること。その上で原子レベルでの構造描写が極めて困難であるという問題がある。そこで本研究では、第一原理計算やマテリアルズ・インフォマティクスをはじめとした情報科学的手法により炭素材料の構造を原子レベルで描写する一般的手法の開発に挑戦する。 従来、アモルファスな炭素材料のナノ構造について、透過型電子顕微鏡やX線解析などの光学的手法および昇温脱離法などの化学的手法の実験結果から様々な構造が提唱されている。しかし、そのどれもが十分条件的な提唱であり、実験的に確実な構造モデルが完成した例は無い。そのため、炭素の構造を計算する上で、計算条件の妥当性を検討することが難しい。そこで最初に、基本骨格に炭素原子を多く含み、かつ実験的に構造が既知となっている有機結晶をモデルに計算を行うことで、炭素骨格の計算に十分な計算条件を検討した。 モデルとして、固体燃料電池のLi固体電解質として開発されたLithium bis(fluorosulfonyl)imide/ disuccinonitrile{LiFSA(SN)2}結晶のLi伝導メカニズムの解明を目指すこととした。これは上述の理由以外に、LiFSA(SN)2の結晶構造が比較的軽い原子で構成されており計算が行いやすいこと、固体燃料電池が近年着目されており、その負極材として炭素材料が使われていることから、電解質-電極界面でのリチウムの授受といった研究にもつなげやすいと考えたためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東京にて研究を行っているため、本年度はコロナ感染症の影響により在宅ワークが多く、なかなか研究が進展しない期間があった。特に年度の前半は緊急事態宣言により研究室へ行くことが難しく、研究の遅滞を余儀なくされた。しかし後半では、制限が緩和され、徐々に研究の速度を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
炭素材料の3次元構造を記述するための記述子の検討を実施する。3次元構造を記述するために、2体間相関関数やグラフ構造、さらにSOAP記述子などの広く使用されている手法を適用する。また、従来の研究では基本骨格となる1枚のグラフェンドメインのみに着目している場合が多いが、本研究では炭素材料のマクロな性質について理解するために、グラフェンドメイン間の界面構造についての検討も行う。 モデルの構築の効率化ために、自分でくみ上げたプログラムとは別に商用のMaterials studioなどのソフトウェアを併用する。また、電子顕微鏡観察の結果も計算に加え、モデルの高精度化を目指す。加えて、結果をまとめ論文化を行う。
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