近年、エピゲノムはアルツハイマー病や軽度認知障害(Mild cognitive impairment: MCI)発症のバイオマーカーとなる可能性が示唆されている。また、MCIは認知症への移行率が高い一方で、正常な認知機能へと改善する可能性を持つことが知られている。本研究は、MCI改善の機序について、エピゲノムの側面から解明することを目的としている。 採用1年目の本年度では、受入研究機関のデータベースから健常高齢者とMCI高齢者を抽出するとともに、対象者の網羅的なmicroRNAデータの基盤構築を行い、MCIに特異的なエピゲノム情報の特定を行った。MCIの判定はPetersenの基準に準じ、認知症ではなく、日常生活が自立しており、全般的認知機能が維持されているが、客観的な認知機能に低下が認められる者とした。なお、認知機能の評価には、National Center for Geriatrics and Gerontology-functional assessment tool(NCGG-FAT)を用い、単語記憶、注意・遂行機能、処理速度をテストし、いずれかの成績で年齢階級ごとの平均値より1.5標準偏差以上の低下があった場合、客観的認知機能低下ありと定義した。また、MCIに関わるエピゲノム情報は未だ十分に一致した見解が得られていないため、まずは網羅的なmicroRNAの発現プロファイリングデータを用いて、健常高齢者とMCI高齢者の間で比較を行った。現在、次年度以降の縦断解析に向けて、認知機能とmicroRNAを含むデータ基盤の整備を進行中である。
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