近年、エピゲノムはアルツハイマー病や軽度認知障害(Mild cognitive impairment: MCI)発症のバイオマーカーとなる可能性が示唆されている。また、MCIは認知症への移行率が高い一方で、正常な認知機能へと改善する可能性を持つことが知られている。本研究は、MCI改善の機序について、エピゲノムの側面から解明することを目的としている。 採用2年目の本年度では、ベースラインでMCIと判定された者を対象に2年後の追跡調査を実施し、認知機能およびエピゲノムの状態変化を特定した。認知機能の評価には、National Center for Geriatrics and Gerontology-functional assessment tool(NCGG-FAT)を用い、MCI判定はPetersenの基準に準じ、認知症ではなく、日常生活が自立しており、全般的認知機能が維持されているが、客観的な認知機能に低下が認められる者とした。ベースラインでMCIと判定された23名における2年後の状態変化の内訳は、MCIから認知機能が改善しなかった群(Stable group)が5名、MCIから正常に改善した群(Reversion group)が10名、追跡調査に参加しなかった者が8名であった。エピゲノム情報については、網羅的なmicroRNAの発現プロファイリングデータを整備し、最終年度に行う縦断解析に向けて、認知機能および血液情報を含む縦断データセットを構築した。
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