研究課題/領域番号 |
20J01674
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
黒沼 太一 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | オマーン / エジプト / 墓地 / 青銅器時代 / 空間分析 / 景観 / 遺跡分布 / 博物館等収蔵資料調査 |
研究実績の概要 |
引き続き本年度も紀元前4~2千年紀の南東アラビアのオマーンと紀元前4千年紀のナイル河下流域のエジプトを対象に、墓地を含む遺跡の空間分析に向けた研究を実施した。本年度は、遺跡情報の集成とそれら情報のデータベース化の継続、データベース収録事項を対象とした地理情報システム(GIS)を活用した分布図の作成、構築した分布図を用いた事例研究などを実施した。 遺跡情報の集成では、データベースへの新規追加と既存情報の改訂を進め、これまでに南東アラビアで600件以上、エジプトなどで850件以上の遺跡情報を収録した。また両地域における既出版の放射性炭素年代値を集成し、遺跡間の関係性の把握にあたって高解像度の年代スケールに基づく比較検討することを目指している。 GISを用いた、データベースと地図の統合による分布図の作成は、オマーンの事例を優先して行った。分布図を用いてタヌーフ地区の墓地分布を検討し、本年度は紀元前2~1千年紀の墓地分布に関する論考を出版した。また同地区の紀元前4~3千年紀の墓地分布を検討した論文を執筆し、現在国際誌の査読を受けている。同じくバート遺跡群についても紀元前4~2千年紀の遺跡分布をまとめ、紀元前2千年紀の遺跡に関しては国際会議Seminar for Arabian Studies 2022で発表し、論文化する予定である。 エジプトの事例は、遺跡間の関係性と遺跡内の墓の関係性の把握に向けたデータベース構築を継続している。アビュドス・ナカダ・ヒエラコンポリスの各遺跡の広域地域圏を対象に、ジオリファレンスにより遺跡位置に座標を付与し、発見物に関する出版情報を実装した分布図を作成した。オマーンの事例で構築した方法論を還元し、遺跡立地の関係性の把握と比較を試行した。またナカダ遺跡の墓および遺物分布を新たに構築した相対編年をもとに検討し、2022年秋の国際会議で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公刊物などに記載されている情報を概ね集成し、墓地だけでなく同時代の遺跡の立地パターンの解明や景観分析といった研究展開を可能とする、基盤的なデータベースの作成を達成した。これにより、次年度以降の成果の取りまとめ、分析が可能となった。その一方で、依然として新型コロナウィルス感染症の世界的な蔓延により外国への渡航が不可能であり、現地での資料調査が実行できていない。全体として、海外渡航を介さずに行うことが可能な面については概ね順調に進展しているが、特に現地渡航が必要な面に関しては引き続き遅れが生じていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症蔓延の終息が依然として見通せないことを踏まえて、データベースを活用した研究展開に比重を移す方針である。加えて、高精細衛星写真を用いたリモートセンシングの導入して、遺跡立地パターンの把握を確実なものとする。海外での資料調査は渡航が緩和され次第実施する予定だが、研究全体の中で補助的な位置づけとする。また蓄積したデータの活用と公開に注力する予定である。
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