紀元前4~2千年紀の南東アラビアのオマーンと紀元前4千年紀のナイル河下流域のエジプトを対象に、遺跡と立地の空間的分析を継続するとともに、研究成果を取りまとめて公表した。また渡航制限の緩和を受けて海外資料調査も実行した。 南東アラビアの事例は、紀元前2千年紀前半における墓制の地域性を地域全体を対象に論じた論文を国内誌から出版した。また事例研究としてオマーンのタヌーフ地区の空間的分析に関する論文を国際誌から2本出版したほか、紀元前2千年紀バート遺跡群の景観研究を国際会議で発表し、本年中に論文が出版予定である。バート遺跡群の事例については、受入研究者らと実施した調査の最終報告書を筆者を中心に現在準備中であり、その中で紀元前4-3千年紀を含めた詳細な研究成果の公表を予定している。エジプトの事例については、ナカダ遺跡の墓地空間構成を国際会議で発表し、論文として国際誌に投稿を計画している。 遺跡情報データベースについては、東京大学中東地域研究センターと連携し、駒場博物館常設展の展示替えに伴う企画としてオマーン北部・UAEの遺跡分布図を提供・公開した。この分布図は簡易版を展示しつつQRコードから詳細版をGoogle My Maps上で閲覧可能として紀元前4~1千年紀の700件以上の遺跡を収録しており、2022年6月の公開以降3300回以上閲覧されている。現在この分布図の英語版と、同様の手法で作成中の紀元前4-3千年紀エジプトの遺跡分布図の公表に向けた準備を進めている。 海外における資料調査は2022年8月と12月にオマーン・マスカットの遺産観光省にて実施した。バート遺跡群の1970年代調査出土資料ならびにBB-6遺跡採集資料を実見し、各遺物の基本事項の記載・実測図の作成・写真撮影・遺物の三次元計測を実施した。いずれも最終報告が未発表のため不詳だったが、今後の研究展開に向けた潜在性を確認できた。
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