研究課題
伊豆小笠原諸島やニュージーランド北方沖の海底カルデラ火山において、数~十年間隔で繰り返して発生する「トラップドア断層破壊」という火山性地震に対して、動力源である地下マグマの圧力と地震・津波規模を定量的に関係づける「静力学的震源モデル」の開発を行うと共に、同現象をこれまで見つかっていなかった別の海底カルデラ火山で探索した。上記の「静力学的震源モデル」は、マグマ溜まりの圧力と断層破壊の力学的な関係を定量的に評価することができる、新しい手法開発である。このモデルを観測された津波や地震波の記録と付き合わせることで、海底カルデラ下のマグマだまり内の圧力を定量化する手法を提案した。また、今後、本モデルに断層の摩擦則やマグマ流のモデルを導入することで、動的な地震現象を再現することができる。本研究計画で重要な課題である「動力学的断層破壊シミュレーション」による地震サイクル現象の再現の前段階の研究であり、大きな研究の進展である。また北硫黄島近海にある海底火山において、地震波・津波記録を用いて同種の小規模な津波を発生させるマグニチュード5程度の地震の繰り返し発生を発見したことによって、同種の地震の観測記録を新しく得ることができた。こうして得られた複数の海底カルデラ火山での火山性地震の観測記録は、異なる火山での現象の共通点および相違点を通して、現象の発生原理をより定量的に洞察するために重要で、今後の研究進展に大きく役立つことが期待される。一方で、スミスカルデラでの同種現象の運動学的震源モデル構築の研究を論文としてまとめるため、東京大学、米国・カリフォルニア工科大、フランス・ストラスブール大学の共同研究者と繰り返し議論を進めてきた。また、オーストラリア国立大のLai博士らと共同で、ハワイ島の陸上カルデラ火山における火山性地震の解析を行い、カルデラ内の断層破壊の震源プロセスを調べた。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルスの流行によって計画していた米国・スタンフォード大学での共同研究は延期せざるを得なかったが、齊藤竜彦博士と地震現象と火山現象を支配する力学理論に基づく、カルデラ内断層構造破壊と地下浅くの高圧マグマが相互作用で発生する地震現象を再現する、「静的力学震源モデル」の開発が進んだ。さらに、新たな海底火山を対象とした研究も進めることができた。 また、論文を出版すると共に学会発表を行う古語ができた。以上のことから、おおむね順調に計画が進展していると言える。
2022年度は、これまで進めてきた運動学的地震モデル、静力学的地震モデルの開発をさらに発展させて、Stanford大学のEric Dunham氏と共同研究を進め、動力学的地震モデルの開発を行う。これによって、カルデラ火山で繰り返す地震現象と、火山活動との関連を定性的に調べ、実際の観測と付き合わせることで、海底火山の活動度を推定する手法を検討する。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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