研究実績の概要 |
当該年度は主として、各種磁気学的分析手法を、ベトナム考古学における各種問題解決に応用するための最初の事例研究を行うことを大目標とし、ベトナム中部クアンナム省のミーソン遺跡(紀元後8世紀~13世紀)の焼成レンガ試料、並びにベトナム北部ホアビン省のランヴァイン岩陰遺跡(16470±80BP)の土壌試料に対する考古地磁気学的・考古岩石磁気学的分析を実施した。 前者に関しては、ベトナムのチャンパ王国関連遺跡の建築・美術編年(e.g. チャン.K.P., 1997)の妥当性に関して考古地磁気学的観点より検討を加えることを目的として実施したものである。結果として、綱川-ショー法実験によって得られた遺構E1・A1・C3・H1のレンガ試料に由来する考古地磁気強度値を建築・美術編年を年代値として並べ、隣国カンボジアにおける先行研究データセット(Cai et al., 2021)およびGEOMAGIA50データセット(Brown et al., 2015)と比較すると、両者の変動傾向は概ね調和的であることが判明した。このことは、同建築・美術編年妥当性・正確性を示唆するものであると判断できる。 後者に関しては、同遺跡生活面の被熱判定を考古岩石磁気学的観点より行うことを目的としたものである。2022年8月時点の発掘トレンチ底部より20 cm、40 cm、60 cm、80 cmに相当する計4箇所より採取された土壌試料に対し、4種6項目の岩石磁気測定を行った結果、20 cmの層位の土壌のみ被熱していると結論付けられた。この結論は考古学的観点からの研究結果を追認・支持するものである。また、岩石磁気測定の結果からは、同層位土壌の被熱温度が500~550℃であったことも新たに推定された。
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