研究課題
白亜紀後期の鳥盤類の中でも特に多様性に富み個体数も多いハドロサウルス科において,海岸に近い地層から産出する個体は内陸の地層のものよりも前肢が短い傾向が初めて明らかになった.これは採餌能力指標の一つである四肢骨長比が産出環境によって有意に異なる,という当初の仮説を支持する結果である.前肢の長さは重心に影響し,短い前肢は一時的な二足歩行への移行を容易とするため,高所の餌資源の利用に有利となると推測できる.一方でもう一つの採餌能力の指標であるクチバシ形態は,仮説に反し産出環境による違いが検出されなかった.しかし同時に,クチバシはランベオサウルス亜科がハドロサウルス亜科よりも幅広く,更に前者は後者に比べて近位の四肢骨が比較的長いことを示した.これらの傾向からランベオサウルス亜科は低い選択性で多くの餌資源を,ハドロサウルス亜科は栄養価の高い餌資源を選択的に摂取していた可能性を提示した.採餌行動の違いによってこれら二つの分類群は共存可能だったと思われる.上記に加え,岡山理科大学が所有するハドロサウルス科標本の記載分類に取り組み,該当標本がコリトサウルスに属することを明らかにした.コリトサウルスはこれまで北米カナダ国のみで確認されていたが,今回の報告は米国から初のものであり,コリトサウルス,しいてはハドロサウルス科が幅広い分布域を持つ可能性を提示する貴重な報告である.カナダ・米国共にコリトサウルスの産出は海岸沿いに多く,今回発表した標本は海岸環境がハドロサウルス科の分布域に影響する可能性を示唆する.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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