研究課題
本研究の目的は、多発性筋炎による筋力低下のメカニズムを解明し、安全かつ有効な治療法を確立することである。令和2年度は、多発性筋炎モデルマウスの骨格筋における損傷性の伸張性収縮に対する耐性を評価するとともに、4週間の伸張性収縮トレーニングが多発性筋炎による筋力低下を改善するかどうかを検証した。課題1では、Balb/cマウスを対照群及び多発性筋炎群に分け、下腿三頭筋に対して単回の損傷性伸張性収縮(100回、150°/s)を負荷した。伸張性収縮を負荷した24時間後にマウスの腹腔内にエバンスブルーを投与し、その24時間後に腓腹筋を採取して組織学的解析を行った。課題2では、Balb/cマウスを対照群及び多発性筋炎群に分け、下腿三頭筋に対して4週間の非損傷性伸張性収縮(20回、20°/s、1回/2日)を負荷した。トレーニング期間終了後、腓腹筋を採取し生理学的解析を行った。その結果、多発性筋炎マウスの骨格筋では損傷性伸張性収縮に対する感受性が増大しないこと、また、4週間の伸張性収縮トレーニングは多発性筋炎に伴う筋原線維機能の低下を防止することが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた課題1の筋損傷実験に加え、次年度に予定していた課題2のトレーニング実験を完了することができた。このことから,当初の計画以上に進展していると判断した。
前述の通り、伸張性収縮トレーニングが安全かつ効果的に多発性筋炎による筋力低下を防止することが明らかとなった。今後、その効果メカニズムを解明することを目的とし、上記の課題2で採取した腓腹筋を用いて生化学的解析を行う。腓腹筋の全筋ホモジネイトにおいて、炎症、酸化ストレスや小胞体ストレス関連タンパク質の発現を評価する。また、腓腹筋から単離した単一筋線維を膜透過処理して作製したスキンドファイバーサンプルにおいて、筋原線維タンパク質や低分子量熱ショックタンパク質の発現を評価する。
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