研究課題
本研究全体の目的は、多発性筋炎による筋力低下のメカニズムを解明し、安全かつ有効な治療法を確立することである。令和4年度は、Nrf2の欠損により多発性筋炎による筋量や筋力の低下が軽減するメカニズムを検討した。方法は、筋特異的Nrf2欠損(Nrf2mKO)マウスとその野生型同腹子にミオシンタンパクで免疫(1週間おきに3回)することで実験的自己免疫性筋炎(EAM)を誘導した。最終免疫から2週間後に長趾伸筋と前脛骨筋を採取し、サイトカインの発現、ケモカインの発現および骨格筋組織に浸潤した炎症性細胞の分布や数をRT-PCR、リアルタイムPCR、蛍光免疫染色およびフローサイトメトリーを用いて評価した。その結果、野生型マウスでは、EAMにより筋量や筋力の低下、炎症性サイトカイン(TNF-αとIFN-γ)やケモカイン(CCL5とCXCL16)mRNAの発現の増加、および骨格筋に浸潤したCD8+T細胞やCD4+T細胞の数の増加が観察された。一方、Nrf2mKOマウスでは、EAMによる筋量や筋力の低下が軽減されるとともに、ケモカイン mRNAの発現や浸潤した炎症性細胞数の増加が抑制された。また、EAMによる骨格筋のケモカインの変動を詳細に検討するため、C2C12筋管細胞にTNF-αとIFN-γを添加し、24時間後に細胞を回収した後、ケモカインのmRNA発現を評価した。その結果、TNF-αとIFN-γを添加したC2C12筋管細胞では、CCL5とCXCL16 mRNAの発現が増加した。これらの結果から、骨格筋におけるNrf2の欠損によりEAMによる筋量や筋力の低下が軽減した要因には、炎症性細胞浸潤の軽減が関与すると考えられる。さらに、この炎症性細胞浸潤の軽減には、筋細胞由来ケモカインの発現抑制が関与する可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Am J Physiol Cell Physiol
巻: 323 ページ: C885-C895
10.1152/ajpcell.00163.2022.
Arthritis Res Ther
巻: 24 ページ: 156
10.1186/s13075-022-02846-2.