研究課題
ほとんどの真核生物でミトコンドリアDNA(mtDNA)は片親遺伝、主に母性遺伝する。長年その分子メカニズムは未解明であったが、最近になり、受精後の父性ミトコンドリア(父性mt)と内部のmtDNAが、細胞内分解システムの一つであるオートファジーによって分解・除去されることが、モデル生物である線虫C. elegansを用いて初めて示された。一方で、なぜ父性mtだけが周囲の母性オルガネラと区別され、選択的にオートファジーに導かれるのか、ほとんど分かっていなかった。本研究では、イメージング、プロテオミクス、遺伝学的手法の3つの手法で父性mt選択的分解の仕組みを多面的に解析し、母性遺伝の分子モデルの構築を目指した。これまでに、新規アダプター分子ALLO-1、およびTBKファミリーキナーゼであるIKKE-1が、受精直後に父性mtに局在化し分解へ導くことが明らかにされ(Sato et al., 2018)、これらの分子が選択的オートファジーを制御する仕組みの解明が待たれていた。本研究では、昨年度までに受精過程のライブイメージング法の開発に成功し、受精直後の各因子の動態を詳細に解析してきた。その結果、ALLO-1の正常な局在化にIKKE-1が必須であることが明らかとなった。また、そのほかの因子の解析から、IKKE-1が欠損した結果、オートファジー始動複合体の局在化も阻害されることが分かった。また、始動複合体のみの欠損によってもALLO-1の局在化異常が起こったことから、ALLO-1は始動複合体か、もしくはさらに下流の因子によって局在を制御されていることが考えられた。これらのことから、IKKE-1の役割は、始動複合体の局在化を制御することであり、結果としてALLO-1の局在化の制御につながると考えられる。これらの結果は複数の学会のシンポジウム等で発表しており、現在論文執筆中である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1865 ページ: 129886~129886
10.1016/j.bbagen.2021.129886
Journal of Cell Science
巻: 134 ページ: -
10.1242/jcs.258699