研究課題/領域番号 |
20J01875
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
加藤 彰人 放送大学, 教養学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | カイラリティ / ヤーンテラー効果 / スピン軌道相互作用 / スピンフィルター |
研究実績の概要 |
カイラル誘起スピン選択性 (chirality-induced spin selectivity, CISS) と呼ばれる、カイラル物質を通過した電子のスピンが示すスピン偏極などのスピン選択性が生ずる現象のメカニズムに対する理論的研究を行っている。本年度はCISSが生ずる機構として、点群C3に属するカイラル分子を対象に、入射電子の分子内での並進状態と回転状態が核座標を通して擬ヤーン・テラー結合することで分子内を伝播するモデルを提案した。分子のカイラリティに関して対称性に基づく議論を行うことで、入射電子の回転方向の偏向性、すなわちヘリシティを適切に記述できることが分かった。このモデルでは角運動量の量子化により、上向きスピンと下向きスピンが感じるポテンシャルエネルギーがスピン軌道相互作用にほぼ依存せず、かつ巨大になることをカイラル構造に由来する効果として見出した。このエネルギー差により、カイラル分子はスピンを選択的に通過させるフィルターとして働きうることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要理論の基本部分をほぼ完成させた。未完了である、実験との比較可能な定量的な計算部分に関しても、方針が確立しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた内容を展開する。特に無機カイラル結晶に対して基礎理論の応用を行い、実験事実との整合性の確認、及び結果の解析を行う。それとともに、前年度に構築した理論をより一般的な対称性の観点から整理し、他の自由度との相関効果や応用可能性について明らかにする。
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