研究課題/領域番号 |
20J01877
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
山崎 絵理子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター有害化学物質研究領域, 特別研究員(PD) (10884819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2024-03-31
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キーワード | ペルフルオロアルキル化合物 / 残留性有機汚染物質 / 農業環境挙動 |
研究実績の概要 |
本研究では、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の緊急課題となっているペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)をはじめとするペルフルオロアルキル化合物群(PFASs)等の農業環境挙動を明らかにするため、農作物や農業環境試料について、それぞれの媒体に存在する30種類前後のPFASの挙動解析を試みる。 今年度は、予備研究で明らかになった「稲作環境でのPFASの循環と米への吸収現象」の追試を主目的として、ライシメーター(小型の閉鎖系田圃)および実際の田圃の両方で稲(インディカ米・ジャポニカ米種)の生長過程・収穫プロセス(籾・脱穀・精米)ごとにPFASの吸収現象をより詳細に解析した。具体的には、田植え直後から稲の成長段階に応じて、長さや部位ごとに4~8種類の植物体試料(穂・茎・根)を採集し、それぞれの時点での灌漑水・土壌・土壌水・周辺大気(ガス・粒子態)・降雨を採集した。そのほか、様々な野菜(根菜類・葉茎菜類・果菜類)を生育方法を変えて栽培・収穫を行い、それぞれの栽培法によりPFASの暴露にどのような差があるのか比較を試みた。 上記試料のうち、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)およびガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS/MS)を用いた稲・野菜・周辺環境媒体試料のPFAS測定および解析まで完了し、現在投稿論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、圃場およびライシメーターを用いたインディカ米・ジャポニカ米の栽培・生育方法の異なる野菜の栽培・収穫を行った。生育期間中の周辺環境媒体(土壌・灌漑水・大気・雨水・ライシメーターにおける浸透水)についても採集を行い、採集した稲・野菜・周辺環境媒体のPFAS測定まで完了した。 野菜については、前年度までの試料分析データをもとに国際誌論文を作成した。特に、今まで困難であった大気中PFASの捕集について、一般環境にも適用可能なことを明らかにし、その有用性を確認することができた。 さらに、次年度に予定するインド換気用調査の事前研究として、インド試料中のビスフェノール分析を行い、国際誌論文投稿した。特に、耕作環境での大気汚染を評価する新技術として新型サンプラーを開発し、その有効性を確認し、各国の大気試料分析結果をEnvironmental Science & Technologyに投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行ったの圃場試験試料分析と並行し、韓国・インドでの稲作及び農産物耕作環境でのPFAS挙動解析を試みる。 ただし、新型コロナウィルスによる海外渡航制限が予想されるため、実行可能な作業を取捨選択し、当初目標に近い成果を得る。
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