本研究では、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の緊急課題となっているペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)をはじめとするペルフルオロアルキル化合物群(PFASs)等の農業環境挙動を明らかにするため、農作物や農業環境試料について、それぞれの媒体に存在する30種類前後のPFASの挙動解析を試みた。昨年度までは、予備研究で明らかになった「稲作環境でのPFASの循環と米への吸収現象」の追試を主目的として、ライシメーター(小型の閉鎖系田圃)および実際の田圃の両方で稲(インディカ米・ジャポニカ米種)の生長過程・収穫プロセス(籾・脱穀・精米)ごとにPFASの吸収現象をより詳細に解析した。今年度は稲・周辺環境媒体試料のPFAS測定結果を用いて、モンテカルロシミュレーションによるインド人(インディカ米)と日本人(ジャポニカ米)の米摂取によるPFAS暴露量の推定を行った。さらに、各稲体と周辺環境媒体試料(大気、土壌、雨水等)との相関性についての判別分析をクラスアナロジーのソフト独立モデリング(SIMCA)や主成分分析(PCA)を用いて統計解析を行い、栽培環境要因と各稲体の相関関係を明らかにした。 また、関連成果としてPFASの軽減策のための活性炭資材の選定に関する研究や日本特有の炭素含量が豊富な火山灰土壌の農業環境におけるPFASの浸出移動による動態研究に関する成果が得られた。
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