研究実績の概要 |
本研究は、イラン中央高原を貫流する内陸河川ザーヤンデルードを対象とし、河川流域に存在する生態的・社会的に多様な諸地域において、流域に暮らす人々が河川とどのように連関してきたのかを、生業・生活の視点から明らかにすることを目的としている。 研究課題初年度であった本年度は、これまで先行して研究調査をおこなってきたザーヤンデルード下流域の農村都市ヴァルザネでの継続調査、そして上流域および中流域の農村における予備調査を実施することを予定していたが、全世界での新型コロナウイルス感染症拡大のため、渡航が困難となり、現地調査については延期とした。一方、予備調査と並行して実施を計画していた資料調査については、当初の調査範囲を拡大して実施した。具体的には、農村統計年鑑資料(1966,76,86,96年)を流域農村の各点について収集し、人口流動や識字率などの変容から河川流域に存在する社会の動態を通時的に明らかにし、その概観を把握できるようデータの整理を進めた。また、水利用と管理について、より通時的視点から変容を明らかにするために、カージャール朝期およびパフラヴィー朝期の水利文書について収集を行い、概訳と整理を進めた。 これまで得られた研究成果の一部については、日本生活学会における研究報告や、イラン・ヤズド大学とアジア経済研究所とが共催したウェブ形式によるイラン環境問題に関するセミナーにおける研究報告を行い、意見交換を行った。また、これまで収集したデータをもとに、英文の学術論文をまとめ、書籍の一章として出版された。
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