研究課題の最終年度(繰越を含む)である本年度の研究実施状況としては、昨年度に続き日本国内においてイランの水利権および水利用に関する文献の精査や資料調査を行った。具体的には、昨年度実施した1982年制定の法律「水公正分配法」のペルシア語原典から日本語への翻訳作業について精査を行い、翻訳の精度を上げた。訳文については来年度『イラン研究』に投稿することを予定している。またそれに並行して、ペルシア語にて出版されているセムナーン地域における伝統的水利慣行と水分配についての書籍の翻訳作業を行った。セムナーンにおける伝統的水利慣行と水分配と、本研究において対象としているザーヤンデルード流域とを対比させることで、水源や自然環境などの条件により生じる水利慣行や水利権の強度の差異について分析を進めた。また、ザーヤンデルード流域における伝統的身体観に関する論考を執筆し、日本沙漠学会の学会誌に投稿中である。そのほか、西アジア研究会および比較水利史研究会などの研究会に参加し、情報収集・意見交換を行ったことで、執筆中の論考について考察を深めることができた。ライフイベントにより7月から採用中断が生じ、成果の発表の多くは翌年に持ち越した。
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