研究課題/領域番号 |
20J01911
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研究機関 | 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 |
研究代表者 |
林 康貴 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, 血液・腫瘍研究部, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 細胞外小胞 / 造血器腫瘍 |
研究実績の概要 |
造血器腫瘍細胞から分泌されるエクソソームをはじめとする細胞外小胞が、間葉系幹細胞などの標的細胞に取り込まれる機構は明らかになっていない。腫瘍由来のエクソソーム取り込みの詳細な機序の解明により、原因分子を対象として治療応用につながると期待される。本研究では造血器腫瘍由来のエクソソームの生体内における挙動を明らかにすることで治療標的となる骨髄微小環境の分子病態を明らかにし、エクソソーム取り込みメカニズムを利用した標的特異的なドラッグデリバリーシステムの開発を目標としている。 今年度はモデルマウスを用いて造血器腫瘍細胞由来エクソソームに含まれるマイクロ RNA や、主要な標的細胞である間葉系幹細胞(MSC)で脱制御される遺伝子群を、マイクロアレイや RNA シークエンスにより検討を行った。MSCの単一細胞RNAシークエンスの結果から、LepRで特徴づけられる亜集団への影響が顕著であり、Skeletal stemとしての機能抑制を介した骨芽細胞系列への分化異常を起こしていることが示唆された。エクソソーム中に含まれるマイクロRNAの発現データとの統合解析を行い、治療標的とすべき遺伝子群・シグナル経路の同定を進めている。またMSCにおけるエクソソーム取り込み機序を明らかにするために、質量分析法による標的細胞とエクソソームの網羅的蛋白発現解析を予定しており、条件検討及びサンプル収集を行っている。 今後は網羅的蛋白発現解析の結果からエクソソーム取込機序の解析を進め、現在同定を進めている治療標的を狙った標的細胞特異的なドラッグデリバリーシステムの開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍細胞由来エクソソームの主要な標的細胞であるMSCについて特に影響が顕著な亜集団を見出した。エクソソームの中に含まれるmiRNAの網羅的発現解析結果との統合的な解析により、治療標的となる経路の解析を順調に進めている。エクソソーム取込機構の解析についても、質量分析法実施のための条件検討とサンプル採取、解析の準備は順調に進んでおり、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
①治療標的となる骨髄微小環境の分子病態の解明と治療法の開発 骨髄間葉系幹細胞の単一細胞RNAシークエンス、腫瘍細胞由来エクソソームに含まれるマイクロRNAの網羅的発現解析の結果から、間葉系幹細胞で脱制御される遺伝子群や治療標的となる経路・マイクロRNAの同定を引き続き進める。その情報をもとに、マイクロRNAを吸着するマイクロRNAスポンジや脱制御される遺伝子に対するsiRNA等の核酸医薬の設計・作成を目指す。 ②エクソソーム取り込みメカニズムを利用したドラッグデリバリーシステムの開発 これまで行ってきた条件検討の結果をもとにして、腫瘍細胞由来エクソソームと標的である間葉系幹細胞に発現する蛋白質を質量分析法により網羅的に解析する。得られた結果からエクソソームの選択的な取り込みに必須な蛋白結合を探索する。さらに、質量分析法により同定したエクソソームの取り込み因子を発現させるベクターを作成する。これを線維芽細胞に導入することで、標的細胞に選択的に取り込まれるエクソソームを産生する。作成したエクソソームに①で作成した核酸医薬をエレクトロポレーション等により導入することで、標的細胞選択的な治療方法の開発を目指す。
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