研究実績の概要 |
本研究では3つの実験を用い,ベトナム人日本語学習者による漢字の語彙処理メカニズムを検討した。まず,学習対象言語の日本語で実施した語彙性判断課題の実験であった。その結果,日越両言語の語彙処理が言語非選択的に活性化(language non-selective activation, Dijkstra & van Heuven,1998,2002;van Heuven,Dijkstra & Grainger,1998など)されている,即ち,漢字を処理する際にベトナム語の知識を無意識に活性化することを確認した。 また,漢字2字語を母語のベトナム語へ口頭翻訳する課題の実験を行った。その結果,音韻類似性が活性化してから,母語の知識を活用して翻訳を達成している(概念媒介モデル,Kroll & Stewart,1994)という結論に至った。 実験3の書字行動では,漢字を聴覚呈示し,ノートパソコンで書字をする。PsychoPy2のPython言語をベースとした心理実験環境構築用のアプリケーションを用い,書字行動を再現できる3次元図を開発した。そこで課題遂行の正誤を判断し,書字の時間を測定した。時間分析においては,反応時間(書字を想起する時間)と書字時間に分けて分析を行った。
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