本研究は、中国近代における「国語科」成立を取りあげ、胡適の思想的営為を検討しようとするものである。 当該年度では、全国教育会連合会の史料を重点的に検討し、1922年新学制に伴う「課程標準綱要」の成立過程を考察した。胡適は第8回全国教育会連合会に列席しており、新学制課程標準起草委員会でも委員を務めた。胡適は五四時期における北京大学との関係で想起されやすいが、本研究では「課程標準綱要」および「国語科」の成立において胡適が果たした役割を見出すことができた。 研究のアウトリーチについては、新型コロナウィルス感染症の影響によって当初予定していた学会を変更せざるを得なかった。しかしながら、柔軟にスケジュールを組みなおし、最終的にはイギリス中国学会、アジア研究学会ニューヨーク地区大会、日本現代中国学会、アジア教育史学会で発表を行なうことができた。オンラインシステムを有効に活用しながら国内外を超えて研究報告と交流ができ、来年度はこの発表を論文化していきたいと考えている。また、この特別研究員期間を活用して、学位申請論文の提出まで至ることができたことも大きな収穫であるといえる。
|