高密度な遊泳バクテリア集団は乱流のような集団運動(アクティブ乱流)を形成する.我々は,アクティブ乱流の物理法則を明らかにするため,内在する秩序渦の幾何学に着目した.相互作用する秩序渦には同方向回転の強磁性的渦と反対方向回転の反強磁性的渦がある.微細加工技術により二つの相互作用する渦の中心間距離Δと半径Rを制御すると,幾何学量Δ/R=√2を閾値として,強磁性/反強磁性転移が起こるという幾何法則が明らかとなった.しかし,三つの渦間でフラストレーションが生じる場合,強磁性的渦が安定化され,転移点がずれることが確認されており,従来の幾何法則を与えたVicsekモデルでは説明できない問題であった.そこでVicsekモデルの連続体記述であるToner-Tuモデルを用いてシミュレーションを行ったところ,従来の幾何法則,及び3体相互作用における転移点のずれも再現する結果となった.このモデルの詳細な理論解析がアクティブ乱流の幾何的普遍性の解明の鍵となる. 個々のキラリティーのアクティブ乱流への影響を調査するため,上下非対称界面を有するデバイスを開発した.この系では,集団運動の回転の対称性が破れ,キラルな渦,及びキラルなエッジカレントが出現した.密度解析により,上面側の密度の高まりが出現の起源となることを突き止めた.エッジカレントは強磁性的渦を安定化することも見出しており.キラリティーを介したアクティブ乱流の新たな制御原理の解明に成功した. また,多様な系の幾何学的普遍性を探求するため,キネシンに駆動される微小管集団の幾何法則を調査した.同様の双子型円境界で実験を行ったところ,Δ/Rに依存して二種のバンドル構造が形成された. Vicsekスタイルモデルの理論解析から,これらの転移は幾何学量Δ/R=√2で起こることが明らかになり,アクティブマターにおける幾何学的普遍性の存在が示唆された.
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